漢文の受身を完全攻略!見分け方や為A所Bの覚え方を徹底解説

こんにちは。「たく先生」です。漢文の受身形について悩んでいませんか?テストや受験で必ず出題される重要な文法ですが、見分け方や覚え方がわからず苦戦している人も多いと思います。この記事では、具体的な例文を交えながら、るやらるの使い分け、送り仮名のルール、さらには使役との違いや為A所Bの読み方まで、受身の全てをわかりやすく解説します。この記事を読めば、漢文の受身に対する苦手意識がきっとなくなりますよ。

漢文の受身って、漢字ばっかりでどうやって見分ければいいのか全然わからないんです。なんだか難しそう…
漢文の受身をマスターする基本
漢文の受身形を深く理解するためには、まず基本となる構文の構造や「目印」をしっかりと把握することが何よりも重要です。
20年以上、古典専門の国語教師として教壇に立ち、これまでに100人以上の生徒を逆転合格へと導いてきた経験からも、ここで基礎を固めることが後々の読解スピードや得点力に直結すると断言できます。
ここでは、受身形を瞬時に見抜くための具体的なポイントや、日本語に翻訳する際の古文とのつながりについて、一つずつ丁寧に解説していきますね。
四つの助字による正確な見分け方

漢文の受身形を白文や訓点付きの文から見分けるための最も確実な方法は、特定の漢字(助字)を視覚的に探し出すことです。
受身の強力なサインとなるのは、主に「見」「被」「為」「所」の四つの漢字です。これらの漢字が動詞の直前に配置されている場合、それは極めて高い確率で主語が他者からの動作を受ける「受身形」を形成しています。
英語の文法を思い出してみてください。受動態を作るときは「be動詞+過去分詞」という明確な形を探しますよね。漢文においてもアプローチは全く同じです。まずはこの四つの漢字を「受身のマーカー」として視覚的に捉えるクセをつけることが、正確な見分け方の第一歩となります。
特に「見」という漢字は、一般動詞として「みる・みえる」と読んでしまいがちですが、直後に別の動詞が続いている場合は要注意です。本来持っていた「見る」という実質的な意味が薄れ、純粋に「動作を受ける」という文法的な機能だけを果たすようになっているからです。これを言語学的には「意味的漂白」と呼んだりもするのですが、難しく考える必要はありません。
また、「所」については、後ほど解説する「為A所B」のセットで使われることが多いですが、実は「所」単体でも受身のマーカーとして機能し、「る・らる」と読んで受身の意味を持たせる用法もあります。まずは「動詞の前に見・被・為・所が来たら受身の可能性が高い」という基本ルールをしっかりと頭に叩き込んでおきましょう。これさえできれば、共通テストなどの基礎レベルでつまずくことは格段に減るはずです。
基礎を固めるための例文解説

抽象的なルールの後は、実際の例文を使って構造を分解していきましょう。漢文の授業で必ずと言っていいほど登場する有名な一文に、「信而見疑、忠而被謗」というものがあります。
これは、司馬遷の『史記』(屈原賈生列伝)に記された、悲劇の忠臣である屈原(くつげん)の理不尽な境遇を表す言葉です。この文を書き下し文にすると、「信なれども疑はれ、忠なれども謗らる」となります。
現代語訳としては、「自分には全く偽りがないのに他人から疑われ、主君に対して忠実であるのに周囲からそしられる(非難される)」という、非常に悲痛な意味を持っています。ここで統語論的な構造に注目してください。動詞である「疑(うたがう)」の直前には「見」が、もう一つの動詞である「謗(そしる)」の直前には「被」がそれぞれ置かれています。
初心者の生徒が模試などで一番よくやってしまう致命的なミスは、この「見」を「みる」と直訳してしまうことです。「信じて疑いを見る」などと訳してしまったら、文脈が完全に崩壊してしまいますよね。こうしたミスを防ぐためには、日頃から白文(漢字だけの文)を眺める訓練が効果的です。もし白文の勉強法で悩んでいるなら、漢文の白文対策と基本的な句形の勉強法の記事で詳しく解説していますので、基礎力を底上げしたい方はぜひ参考にしてみてくださいね。
迷わないる・らるの使い分け

受身形を日本語の文脈に正しく書き下す際、絶対に避けて通れない最大の関門が、古文の助動詞「る」と「らる」の使い分けです。
多くの高校生がここで「なんとなくのフィーリング」に頼ってしまい、定期テストや模試で不要な減点を受けているのを何度も見てきました。実は、日本の高校教育において、古文の文法事項と漢文の訓読は密接に連動して指導されるべきであることが、(出典:文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』)の古典探究の項目でも明確に示されています。つまり、漢文の受身をマスターするということは、古文の未然形接続をマスターすることと同義なのです。

る・らるの使い分けは、直前にある動詞の「活用の種類」に注目するだけで、完璧にロジカルに決まるんですよ。
ルールは極めて論理的でシンプルです。直前にある動詞を「古文の動詞」として捉え直した際、その動詞の活用の種類が「四段活用」であれば、未然形にして「る」を接続させます。
一方、四段活用以外の動詞(ナ行変格活用、ラ行変格活用、一段活用、二段活用など)であれば、未然形にして「らる」を接続させるという、ただ一つのアルゴリズムしかありません。フィーリングを完全に捨てて、この法則を機械的に当てはめるだけで、使い分けで迷うことは一切なくなります。
古文法の未然形接続が鍵
| 動詞の活用の種類 | 接続する助動詞 | 書き下しの具体例 |
|---|---|---|
| 四段活用 | る(未然形接続) | 疑は・る、謗ら・る |
| 四段活用以外の動詞(ナ変、一段、二段など) | らル(未然形接続) | 治め・らる、任ぜ・らる |
正確に訳すための送り仮名のルール

書き下し文を作成する際の「送り仮名のルール」も、テストの得点に直結する非常に重要なポイントです。前述した「見」や「被」といった受身マーカー(助字)自体は、日本語として発音することは原則としてありません。いわゆる「置き字」に準ずる扱いになります。
しかし、そのままでは日本語として受身の意味が通じないため、代償的な措置として、直下の動詞の右下にカタカナで「ル」または「ラル」という送り仮名を必ず振る必要があります。
たとえば「被謗」という二文字の熟語があったとします。動詞である「謗(そしる)」は、古文法ではハ行四段活用に分類されます。四段活用の未然形は「謗ラ(そしラ)」となりますね。そこに先ほどの接続の法則に従って「ル」を添えるため、最終的な書き下し文は「謗らル(そしらる)」として完成するわけです。
このプロセスにおいて、「る・らる」の活用形自体が文脈によって変化することにも注意が必要です。もし後ろに名詞(体言)が続く場合は、連体形である「るる・らるる」へと形を変えなければなりません。
このあたりの文法変化に少し自信がないなと感じる人は、詳しい内容を古文の助動詞「る・らる」の活用と識別を完全攻略で丁寧に解説しているので、併せて読んで復習しておくことを強くおすすめします。古文の基礎が固まれば、漢文の送り仮名ミスは確実になくなりますよ。
ベクトルが異なる使役との違い

漢文の文法において、受身形と並んで双璧をなす最重要構文が「使役形」です。実際の検索や生徒からの質問でも「受身と使役の違いがわからない」「見分け方を教えてほしい」という声が非常に多く寄せられます。
この二つは「他者が関与して成立する動作」という点では共通していますが、統語論的な力の向かう方向、つまり「ベクトル」が完全に正反対を向いていることを意識してください。
- 受身(Passive Voice)のベクトル:主語が他者から特定の行為を「受ける・被る」という求心的な力を持っています。多くの場合、主語は権力関係における弱者や、被害を受ける側の立場にあります。
- 使役(Causative Voice)のベクトル:主語が他者に対して特定の行為を「させる・強制する・指示する」という遠心的な力を持っています。こちらは主語が絶対的な強者や上位者(王や将軍など)であることがほとんどです。
使役構文を見分ける際には、「使」「遣」「令」「教」「命」といった特有の使役マーカーを探します。さらに決定的な違いとして、使役形では動作をさせられる対象の人物に対して「ヲシテ」という送り仮名が付加され、文末の動詞には使役の助動詞「シム」が付きます。
文脈上で「誰が誰に対してアクションを起こしているのか」という人間関係のヒエラルキーを冷静に俯瞰することが、両者を明確に弁別する最大のコツかなと思います。より深く理解したい方は、漢文の使役形「使・教・令」の基本構造と見分け方も読んでみてくださいね。
漢文の受身を強固にする学習法
受身の基本的なルールと見分け方を理解した後は、それを本番の過酷な試験環境で瞬時に、かつ正確に引き出せるように記憶を強固にしていく必要があります。ここからのセクションでは、受験生が最も陥りやすい「忘れやすい助字」の対策から、最高頻度で出題される特殊構文の暗記のコツ、さらには助字を使わない高度な文脈判断まで、一歩踏み込んだ実践的な学習アプローチを深掘りしていきましょう。
忘れやすい為と所を繋ぐ覚え方

漢文の受身形を作る四つの助字(見・被・為・所)のうち、「見(みる)」や「被(こうむる)」という漢字は、元々の意味からしてなんとなく被害を受けたり、状況を目の当たりにしたりといった「受身っぽい雰囲気」をまとっているため、比較的覚えやすい傾向にあります。
しかし、残りの「為」と「所」の二つに関しては、受身のサインとして試験本番で非常に忘れられやすいという厄介な特徴を持っています。
なぜ忘れやすいのかというと、これらの漢字が持つ一般的な意味に思考が引っ張られてしまうからです。「為」は通常「~となる(なる)」「~をつくる(なす)」といった能動的な意味で使われますし、「所」は単純に「場所」や「~するところ」といった名詞的な空間を表す言葉として認識されがちです。これらが単独でポンと文中に置かれていると、なかなか受身のマーカーとして脳が認識してくれないんですね。
この弱点を克服し、確実な記憶として定着させるための最高のアドバイスがあります。それは、この忘れやすい「為」と「所」を別々の単語としてバラバラに覚えようとするのではなく、強力な磁石のように互いを関連付け、一つの「セット構文」として脳にインプットしてしまうことです。無関係に見える要素同士を繋ぎ合わせることで、人間の脳は驚くほど強固な記憶(スキーマ)を形成することができます。
記憶の起点となる為A所Bの読み方

先ほどお話しした「為」と「所」を強力に関連付けるための最強のツールこそが、漢文のテストで最も出題頻度が高い超重要句法である「為A所B」の構文です。これを丸ごと記憶の起点(アンカー)にしてしまうのが、最も効率的な学習法です。
この構文の伝統的かつ公式的な書き下し文の読み方は、「AのBする所と為る(AのBするところとなる)」と規定されています。これを言語学的に分解してみましょう。
【為A所Bの構造と訳し方】
| 漢字 | 役割(意味) | 書き下し・現代語訳のポイント |
|---|---|---|
| 為 | 〜となる(受身の決定) | 文の最後に「と為る(となる)」として着地 |
| A | 動作の主体 | 送り仮名「の」をつけて「Aの」とする |
| 所 | 〜対象・事柄 | 送り仮名「と」をつけて「所と」とする |
| B | 実際にされる動作 | 動詞の連体形にする(例:罰する) |
表にあるように、「所+動詞(B)」の部分は「Bする対象・事柄」という名詞の塊を作ります。そこに動作の主体であるAが加わって「AがBする対象」となり、最後に文頭の「為(~となる)」がくっつくことで、直訳すると「(主語は)AがBする対象となる」という表現が完成します。
【致命的な誤訳に注意!】
書き下し文の「AのBする所と為る」という響きがどこか能動的な雰囲気を漂わせているため、現代語訳を書く際に「AがBされる」と主語と目的語を逆転させてしまう致命的な誤訳ミスが後を絶ちません。このミスを防ぐためには、構文を見た瞬間に「為A所B = 受身の特殊形 = Aからの被害を受ける = AにBされる」という等式が反射的に引き出せるように、徹底的な反復練習を行ってくださいね。
於などの置き字が持つ役割

前置される受身のマーカーだけでなく、動詞の後ろに配置されて重要な役割を果たすのが「於」「于」「乎」といった前置詞群、いわゆる「置き字」です。
受身形においてこれらの置き字が果たす最大の役割は、「動作の主体(誰にその行為をされたのか)」を文中に導入し、明示することにあります。英語の受動態における「by+動作主」の働きをイメージしてもらうと、非常にしっくりくるかなと思います。
白文における構造的な公式は「動詞 + 於(于・乎) + 動作主(人物名など)」という語順になります。たとえば「吾嘗三見逐於君」という文であれば、「見」が受身を示し、動詞「逐(追放する)」の後に「於」が来て、動作主である「君(主君)」が続きます。書き下す際には「吾嘗て三たび君に逐はる」となり、「私は以前三度、主君に追い出された」と訳されます。
ここで重要なのは、漢文訓読のルールにおいて「於」などの置き字自体は日本語の音声として発音しないという点です。その代わりとして、直後に続く動作主(この場合は「君」)に対して、格助詞の「ニ」を送り仮名として添えるという厳密な法則があります。置き字と送り仮名「ニ」が見事な連携プレイを見せることで、動作の起点と被害の事実が明確に伝わる美しい日本語の受身構文が完成するのです。
身分や処罰を表す言葉の重要点

漢文の読解レベルが上がり、難関大学の入試問題やハイレベルな模試に挑戦するようになると、学習者を悩ませるもう一つの壁が出現します。
それが、これまで説明してきた「見」「被」「於」といったわかりやすい文法的な受身マーカーが一切存在しないにもかかわらず、文脈の推移から受身として解釈・訓読しなければならない「語彙的受身(文脈依存型受身)」というパターンです。
なぜマーカーがないのに受身になるのか?それは、使用されている動詞自体が歴史的・社会的な背景を強く帯びているからです。代表的なものとして、身分の授受や登用に関する「封(ほうずる=領地を与える)」「任(にんずる=役職に就かせる)」「用(もちゐる=採用する)」、あるいは刑罰に関する「族(ぞくす=一族を皆殺しにする)」「誅(ちゅうす=罪を咎めて殺す)」といった動詞群が挙げられます。
【歴史的背景から読み解くテクニック】
例えば、「封於泰山」という白文があったとします。これを書き下すと「泰山に封ぜらる」となり、「泰山で領地を与えられた(諸侯に任じられた)」という意味になります。封建社会であった古代中国の君臣関係を想像してみてください。
臣下という立場の人間が、自らの意志で勝手に「封ずる(領地を与える)」ことや、自分から「用いられる」ように決定することはあり得ません。常に王や皇帝といった上位者から「封ぜられる」という受動的な立場に置かれています。したがって、主語が臣下であり、これらの動詞が続いている場合は、マーカーの有無にかかわらず必然的に受身の形で書き下すことが求められます。
漢文の受身を攻略する最終まとめ

さて、ここまで漢文の受身形について、基礎から高度な文脈判断まで非常に多くの情報をお伝えしてきました。長丁場でしたが、最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。
漢文の受身攻略の第一歩は、見、被、為、所という四つの助字(マーカー)を白文の中から正確に見抜く視覚的な訓練から始まります。そして、それらを日本語に変換する際には、古文の未然形接続のルールに従って「る」と「らる」を論理的に使い分けることが求められます。所単体でも受身で読む場合があることも、頭の片隅に置いておきましょう。
また、受験生が最も忘れやすい「為」と「所」については、バラバラに記憶するのではなく、「為A所B(AのBする所と為る = AにBされる)」という一つの定型構文と表を記憶の起点(アンカー)として関連付けることで、忘却を防ぎ、強力な武器にすることができます。さらに、ベクトルが逆を向いている「使役形」との構造的な違いや、助字を用いずに身分や処罰に関する動詞の性質から読み解く「語彙的受身」の存在も、高得点を狙う上では絶対に欠かせない知識ですね。
漢文は一見すると漢字の羅列で難解に見えますが、その背後にある論理的なルールと歴史的な背景を紐解いていくと、驚くほどシステマティックでパズルのように面白い科目だと気づくはずです。今回解説したポイントを何度も復習して、ぜひあなたの強みに変えていってくださいね。たく先生は、あなたの学びの道をこれからもずっと応援しています!









