【徹底解説】令和7年度共通テスト国語<漢文>


漢文ってどう読めばいいか分からないから、何か苦手なんだよね…。

わかるー。特に白文を読む問題とか、何でこの解答になるのっていうものばかりだよね。令和7年度の共通テスト漢文を見てもよくわからなかったし。

そうよね…。たく先生、何か上手いやり方ないですか?

上手いやり方ですか? やはり地道な勉強が一番! と言いたいところですが、それぞれ解き方のポイントがあるので、それを説明しましょうか?

ぜひお願いします!!
令和7年度の漢文は文章が2つある複数文でした。文章Ⅰは『論語』に対する注釈、文章Ⅱは読書論です。文章Ⅰが師匠、文章Ⅱが弟子という関係も注目するべきポイントです。設問数は問6までとほぼ例年通りですね。それでは各問を見ていきましょう。
以下の解説を見る際は、問題を印刷するか、別の画面で見ると分かりやすくなりますよ。
問1 語句の意味
選択肢の青のアンダーラインのところが不正解のところです。
ア「女」
- かれ
- だれ
- あなた 〇
- むすめ
問1のようなごく問題の場合、まずその語をどのように読むのか、どのような意味を持つのかを考えます。
〇読み…をんな・むすめ・ぢよ 〇意味…女性・娘
〇読み…なんぢ 〇意味…あなた・お前
※「なんぢ」と読む語…汝・女・爾・而・乃
今回の文脈は孔子は子貢に話しかけている場面です。そのため、「女」の持つ意味では二人称の用法である「あなた・お前」しか該当しません。よって正答が③になります。④の「むすめ」は語句の意味としてはありますが、文脈にあてはまりません。
イ「非与」
- ちがうのですか 〇
- そむくのですか
- けなされるのですか
- まちがわれたのですか
〇読み…あらズ 意味…~ではない ※カタカナは送り仮名
〇読み…ひ 〇意味…正しくないこと・あやまり・欠点 など
非は「あらズ」と読む時には必ず「~にあらず」と直前に断定の助動詞「なり」の連用形である「に」をとります。今回は送り仮名が特にないので、今回は考えません。「ひ」と読む時は、よく是非(正しいことと間違っていること)のように使います。今回は「是」はないですがこの意味で考えると選択肢の②と③が間違いであることはすぐに識別できます。正解とよく似ているのが④の選択肢です。
「まちがわれた」は言い換えると「〇〇を間違えられた」という尊敬語になります。以下の本文で確認してみましょう。
本文「子曰、賜也、女以予為多学而識之者与、対曰「然、非与。」曰、「非也、予一以貫之。」
書き下し文「子曰く、賜や、女予を以て多く学びて之を識る者と為すか」と。対へて曰はく、「然り。非か」と。曰はく、「非なり。予は一以て之を貫く」と。
口語訳 先生がおっしゃった。「賜や、お前は私を多くのことを学んで、それを記憶している者と思っているのか」。(子貢は)答えて言った。「そう思っています。違うのですか」
こうして現代語訳にするとはっきりしますね。先生である孔子の問いかけ「~思っているのか」に対して弟子の子貢は「然り」と返答しています。この然りは「そのようである・正しい」などの意味を持つ形容詞です。相手の問いかけに対して返答しているので、この場合、その問いかけに対して、先生のことをそのように思っていると返答しているのです。そしてそれに「非」を続けています。このことで自身の考えが違うのではないかという問いかけになりますので①が正解になります。
ウ「毎」
- たまたま
- ときおり
- とりわけ
- つねづね 〇
この問題では「毎」の読みや意味が何か迷ってしまいますね。もともと「毎」の意味は以下のようになります。
音読み マイ・バイ
訓読み ごと・ つね・ むさぼ(る)
ただ、このように意味を見てわかっても、実際の試験の場面では難しいかと思います。そこで考えるのが熟語で考えることです。「毎」が付かっわれる熟語で有名なのが「毎日・毎晩・毎回」など多数ありますよね。こうした熟語を傍線部の場面に当てはめてそれで意味が通用すれば、それが正解になります。
今回の場面は【文章Ⅰ】の内容を受けて述べられています。【文章Ⅰ】の論語に対する師匠の大意を見てみましょう。
先生(孔子)は思うに、常に子貢が先生を褒めたたえる言葉を聞く時に、(先生は)多くの儒教の古典を学び、その上そこに書いていることをよく覚えることができたので、今のような徳を身につけられたのだと子貢は考えているのだと思ったのだ。だから、先生はその気持ちを推し量って、子貢に尋ねたのだ。「『違う。私は一つの根本の考えを貫いているのだよ』」と先生がおっしゃったのは、学問は、多くを雑然と学んでは、その進む道をかえって暗くしてしまうので、そうすべきではない。ただ、一つの根本の考えを得て、これを柱とするのだ。
この大意を見てわかるように文章Ⅱでも多くを読むのではなく、根本的なところを大事にするように警鐘を鳴らしています。よって、弟子に向けての言葉と常日頃から注意していたと考え、④が正解になります。
問2は理由説明
「孔子が子貢の考えを「擬言」して尋ねた理由を筆者はどのように推測しているのか」という問題です。要するに筆者の考えを述べよということになりますね。漢文では、筆者の考えを述べる時に使う文字がパターン化しています。その一つが「蓋」です。
「蓋」 読み…けだシ 意味…思うに・考えるに
「以為」 読み…おもへラク 意味…思うに・考えるに
この二つの語が出てくると、筆者や登場人物の主張スタートと思って読んでもらっても間違いないです。今回も実際3行目から「夫子蓋~」と始まっていきます。それでは選択肢を検討していきます。
- 子貢の日頃の言動には、「先生は古典を多く学んでその内容をよく覚えることよりも、人徳の完成を追求しているのだ」と考えているふしが見受けられたから。
- 子貢の日頃の言動には、「先生が古典を多く学んでその内容をよく覚えるのは、学者としての名声を獲得するためだ」と考えているふしが見受けられたから。
- 子貢の日頃の言動には、「先生は古典を多く学んでその内容をよく覚えることで、有徳者を心服させたのだ」と考えているふしが見受けられたから。
- 子貢の日頃の言動には、「先生は古典を多く学んでその内容をよく覚え、それによって人格を完成させたのだ」と考えているふしが見受けられたから。 〇
問1でも説明しましたが、孔子は博学のように広く学ぶことによりも、一つの道を深く学ぶことを推奨しています。しかし、子貢はそう捉えておらず、たくさん勉強したからこんなにすごい人になったんだろうと考えています。よって、この内容を押さえている④が正解になります。他の選択肢はどれもこの内容を押さえていません。①は古典を多く学ぶことより人徳の完成というように比較しているの不正解です。②は「名声を獲得するため」、③は「有徳者を心服させた」がそれぞれ間違いですね。
問3は解釈問題
解釈問題は古文同様、直訳を大切にしますが、きちんと順番を踏む必要があります。
- 書き下し文にする
- 句形の訳を把握する
- 辞書的な意味を踏まえた直訳する
- 文脈に合わせて文意や単語の訳を調整する
- SVOCや5W1H、指示語の内容など補足できるものは全てする
さてではこの手順で解答を作っていきます。
- 「日に数紙を読み了ふるは、日に数字を知り得るに如かず。」
- 【「~に如かず」…~に及ばない・~の方が良い】が使われている
- 日々数枚の紙を読み終えることは、日々数文字を知ることができることに及ばない。
- 日々数枚の紙の文章を読み終わることは、日々数文字を理解できることに及ばない。
- 日々数枚の紙の文章を読み終えるより、日々数文字を理解する方がよい。
そして、こうして作っていった解答に一番近い選択肢を選びます。くれぐれも選択肢の中から解答を選ぼうとしてはいけません。共通テストは問題作成の最高峰のプロフェッショナルが受験生の知識を試すために作っています。ですから、素直に自分であればこのように訳す! という確信で解答を選ぶようにしましょう。
- 漢文の書物を読むうえで、日々数ページの文章を何度も音読するよりも、日々数文字から成る句を確実に覚えていくほうがよい。
- 漢文の書物を読むうえで、日々数ページの文章をただ読み通すよりも、日々数文字の漢字の意味や用法を理解していくほうがよい。 〇
- 漢文の書物を読むうえで、日々数文字から成る句を確実に暗記するよりも、日々数ページの長い文章を多読するほうがよい。
- 漢文の書物を読むうえで、日々数文字の漢字の意味や用法を習得するよりも、日々数ページの文章を繰り返し読むほうがよい。
選択肢③④は比較の対象が逆になっているので間違いです。選択肢①は「数枚の紙の文章を読み終わるよりも」が何度も音読することになっているので、直訳から外れるので不適となります。
問4は白文に返り点をつけることと書き下し文
白文に返り点や送り仮名を付け、書き下し文にすることはほぼ毎年出題する典型的なパターンです。そのため解き方も手順通りやれば大丈夫です!
- 句法の有無をチェックし、返り点が付く場所を確かめる
- SVOCに当てはまりそうなものを確かめる。特に返り点が付くVに着目する
- 該当する書き下し文を現代語訳をして、文脈に当てはまるかを確かめる
それではこの手順で進めていきましょう。
- 句形としては「莫」があります。返り点もついていることから返読文字かつ否定形の「莫し(なし)」と考えて良さそうです。また「所」があります。この「所」も返読文字で、この文字に返ってくる内容を名詞句にするものです。(句とは「~のこと」のような意味のまとまり)否定形の「不」もあります。
- SVOCの内、Vに該当しそうな文字は「莫・通達・謂」あたりです。Vには返り点が付くことが多いので確認します。
- 上記2つを満たしている書き下し文を優先的に口語訳し、文脈にはまるか確認します。
上記を満たしているものは、残念ながら今回はありませんでした。ですので力技になりますが、書き下し文を一つずつ直訳して、文脈にはまるか確認する必要があります。
- 博は通達せざる所の謂莫く…博は通達しないところの意味はなく
- 博は通達せざる所莫きの謂にして…博は通達しないところがないという意味で 〇
- 博は通達の謂はざる所莫く…博は通達の言わないところはなく
- 博は通達を之れ謂はざる所莫くして…博は通達を言わないところを無くして
直前で「博」の捉え方は多読だけでは博学とは言えないと述べています。そしてこの傍線部のあとに、一冊の書物に精通することもまた博学と述べています。ここから②が正解となります。
問5は「又」と「亦」の意味の識別
少し傾向が変わった問題が出題されました。「また」という意味を整理しておきましょう。
- 亦…~も同様にまた
- 還…再びまた・さらにまた
- 復…再びまた・さらにまた
- 又…その上にまた・加えてまた
今回出題した「又」は多くの書物を学んで、それに加えてよく覚えたという文脈で使われています。
- これはまたとない絶好のチャンスだ。
- 校長または教頭が説明に来るはずだ。
- 勝負では、運もまた実力のうちである。
- 友であり、そのうえまたライバルである。
この選択肢の中で、この意味になるのは、④しかありません。
そして次の「亦」は、「多くの書物を学ぶのではなく一冊の書物に精通することは、(学ぶことが)狭くなりそうであるが、これもまた実は博識になれるだ」という文脈の中にある。
以上の意味を踏まえるものは③になります。
問6は文章Ⅰと文章Ⅱの考え方の説明
ここまで読んだ皆さんなら、文章ⅠⅡの要点もわかっているかと思います。文章Ⅰでは一つの根本となることを把握すること、文章Ⅱでは一冊の書物を知り尽くすことが述べられており、その共通する部分は、1つを極めることになります。これに該当するのは④のみです。
- 皆川淇園は、学問では、要点をまず把握し、それに基づいて個別の事例を分析すべきだと説いている。田中履堂は、読書によって多くの具体的な事柄を知って、それら全てを貫通する法則を発見することが大切だと説いている。演繹的に学ぶのか帰納的に学ぶのかという点で、両者の考えは対立している。
- 皆川淇園は、学問では、鍵となる部分を素早く見極めて、それを広く適用して要領よく学ぶべきだと説いている。田中履堂は、一冊の書物を精読することを通じて、学問の土台をじっくりと築くことが大切だと説いている。学びにおいて効率を重視するのか否かという点で、両者の考えは対立している。
- 皆川淇園は、学問では、精密な分析を通じて、現実の問題に応用できる原理を抽出すべきだと説いている。田中履堂は、現実の問題の解決につながる知識を集積するためには、様々な分野に関係する書物の熟読が大切だと説いている。学びにおける実用性を重んずる点で、両者の考えは通底している。
- 皆川洪園は、学問では、雑多な知識に惑わされないように、基軸となる要点を把握すべきだと説いている。田中履堂は、多くの書物を乱読するよりも、一冊の書物を隅々まで深く理解することが大切だと説いている。学びにおいて多くの知識を得ることに重きを置かない点で、両者の考えは通底している。 〇

以上、共通テストの説明をしましたが、わかりましたか?

なるほど~。内容理解に組み合わせて、句法や語句の知識を用いていくのですね

うんうん。パターン化することで、解きやすくなりそうなところも良かったです!

参考になったら、嬉しいです。この解き方を生かして、他の年度も取り組んでみてくださいね。

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