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【香炉峰の雪】現代語訳と品詞分解!なぜ笑った?枕草子のテスト対策を教員が徹底解説

枕草子「香炉峰の雪」御簾を巻き上げて雪景色を眺める清少納言と微笑む中宮定子
たく先生
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高校の国語・古文の教科書(言語文化・古典探究)で必ず出会う、日本三大随筆の最高峰『枕草子』の超重要章段、「香炉峰の雪(こうろほうのゆき/雪のいと高う降りたるを)」。

雪の降り積もる寒い朝、主君である中宮定子(ちゅうぐう ていし)から不意に投げかけられた「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」という問いかけに対し、作者・清少納言は言葉で答えるのではなく、ただ静かに「御格子を上げさせ、御簾を高く巻き上げる」という神対応を見せました。その瞬間、中宮定子は満足そうに微笑み、居並ぶ先輩女房たちも「さすがはこの宮にお仕えするにふさわしいお方だ」と感嘆の声を上げます。

みちか
みちか

たく先生、このお話って教科書で読むと「なぜ御簾を上げただけでこんなに大絶賛されるの?」「定子さまはなぜ笑ったの?」って不思議に思う生徒が多いですよね。あと、定期テストで助動詞や使役、二重敬語がめちゃくちゃ細かく出題されてパニックになります……!

たく先生
たく先生

みちかさん、まさに全国の高校生が教室で抱く最大の疑問がそこなんだ!実はこの場面、たんなる「知識自慢」や「お笑い」ではないんだよ。唐の大詩人・白居易(白楽天)の漢詩を踏まえた、定子と清少納言による「知的な阿吽の呼吸(ハイレベルな謎解き遊び)」なんだ。

しかも文法面でも、「高う(ウ音便)」「上げさせて(使役)」「さべきなめり(撥音便無表記)」「仰せらるれば/笑はせたまふ(最高敬語の方向)」など、定期テスト作成者がヨダレを垂らすほど出題したい重要ポイントがぎっしり凝縮されている。指導歴24年目の高校国語教員として、テストで満点を取るための秘訣を余すところなく伝授するよ!

📌この記事を読めばわかること!
  • 『香炉峰の雪』の全体あらすじと登場人物相関図(わずか30秒で把握)
  • 原文・現代語訳の完全対照表(1文ごとの正確な逐語訳)
  • テスト直撃の4大文法(ウ音便・使役・撥音便無表記・係り結び)と品詞分解
  • 誰から誰への敬意?最高敬語(二重敬語)の敬意の方向完全整理
  • 定子はなぜ笑った?白居易(白楽天)の漢詩『香炉峰下新卜山居草堂初成偶題東壁』の真意
  • 現役高校教員特製!定期テスト予想問題5選(横書きカード+思考プロセス解説)
  • スマホで1分復習できるAI暗記アプリ「PathMemoria」直通デッキ

『香炉峰の雪』のあらすじと登場人物!30秒でわかる全体像

『香炉峰の雪(第280段/日本古典文学大系第299段)』は、作者・清少納言が仕えた中宮定子の華麗な後宮(サロン)での出来事を回想した「日記的章段(回想章段)」の代表作です。まずは物語のあらすじと、登場人物の関係性を素早く整理しておきましょう。

わずか3行に凝縮された「知的な阿吽の呼吸」

平安時代の宮中で炭櫃を囲んで暖をとる女房たちと中宮定子
炭櫃(すびつ)を囲んで暖をとりながら親しく談笑する平安宮中の女房たちと中宮定子

ある雪の日、庭には雪がたいそう高く降り積もっていました。宮中ではいつもと違って御格子(雨戸のような格子戸)を下ろしたままにしており、部屋の真ん中にある炭櫃(すびつ:木製の大型火鉢)に炭火をおこして、女房たちが集まり世間話などをして中宮定子にお仕えしていました。

外の寒さを遮り、暖かな火を囲んでのんびりとくつろぐ静かな冬の朝。そんな中、定子がふと清少納言に向かってこう語りかけます。

「少納言よ、香炉峰(こうろほう)の雪いかならむ。」
(少納言よ、香炉峰の雪はどうなっているだろうね?)

突然の唐突な問いかけ。しかし、清少納言は一切慌てることなく、言葉で「〇〇です」と答えることもしませんでした。清少納言はすぐに下女に命じて御格子を上げさせ、自ら進み出て御簾(みす:竹のすだれ)を高く巻き上げたのです。

巻き上げられた御簾の向こうには、一面銀世界となった美しい庭の雪景色が広がっていました。その様子を見た中宮定子は、満足そうに誇らしげに微笑まれました(笑はせたまふ)。周囲にいた先輩女房たちも、「漢詩の知識は知っていても、とっさにそんな行動をとるなんて思いつきもしませんでした。やはり清少納言さんは、定子様にお仕えするのに最もふさわしい人ですね」と絶賛したのでした。

登場人物相関図と人間関係(定子・清少納言・女房たち)

この章段を深く味わい、テストの人物関係問題をクリアするためには、登場人物の役割とパワーバランスを把握することが不可欠です。

👥 『香炉峰の雪』登場人物と関係性まとめ
登場人物 宮中での立場 作中での役割と心境
中宮定子
(ちゅうぐう ていし)
一条天皇の正妻(中宮)。関白・藤原道隆の長女。 教養高く雅なサロンの主宰者。白居易の漢詩をもとに清少納言へ知的な謎かけを仕掛け、期待通りの機知に満足して微笑む。
清少納言
(せいしょうなごん)
中宮定子に仕える女房。『枕草子』の作者。 漢学の教養と抜群の機転を誇る。定子の意図を瞬時に見抜き、言葉ではなく「御簾を高く上げる」という粋な行動で即応する。
人々(女房たち) 定子の御所に仕える先輩・同僚の女房たち。 漢詩の知識は知っていたが、とっさに行動へ移す機転は利かなかった。清少納言の機知を素直に称賛し、定子への適任ぶりを認める。

【全文対照】『香炉峰の雪』の原文と現代語訳

枕草子「香炉峰の雪」御簾を巻き上げて雪景色を眺める清少納言と微笑む中宮定子
御簾を高く巻き上げ、外の純白の雪景色を定子にお見せする清少納言

ここからは、『香炉峰の雪』の全本文を1文ずつ区切り、原文・現代語訳・現役教員のワンポイント注記を対照表形式で徹底解説します。古文の定期テストでは、この表の日本語訳をそのまま書かせる問題が毎年数多く出題されます。

原文・現代語訳の逐語対照表

原文(古文) 現代語訳(口語訳) 教員の文法・読解ポイント
雪のいと高う降りたるを、 雪がたいそう高く降り積もっているのに、 高う:ク活用形容詞「高し」連用形「高く」のウ音便。
降りたる:完了・存続の助動詞「たり」連体形。
例ならず御格子まゐりて、 いつもと違って御格子をお下ろし申し上げて、 例ならず:いつもと違って。
まゐりて:格子をお下ろしして(謙譲語)。定子に対する敬意。
炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、 炭櫃(いろり・火鉢)に火をおこして、世間話などをして(女房たちが)集まり控えているときに、 炭櫃(すびつ):木製の大型火鉢。
さぶらふ:控えている、お仕えしている(謙譲語)。
「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ。」と仰せらるれば、 (中宮定子様が)「少納言よ、香炉峰の雪はどうであろうか(どうなっているだろうね)。」とおっしゃるので、 いかならむ:断定「なり」未然+推量「む」連体(体言省略)。
仰せらるれば:「仰す」+尊敬「らる」の最高敬語!動作主は定子。
御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、 (私は下女に)御格子を上げさせて、(自分自身で)御簾を高く巻き上げたところ、 上げさせて:下二段動詞「上ぐ」+使役「さす」。格子は重いため下女に上げさせた!
上げたれば:完了「たり」已然形+「ば」(確定条件)。
笑はせたまふ。 (中宮定子様は、満足そうに)お笑いになる。 笑はせたまふ:使役・尊敬「す」+尊敬「たまふ」の最高敬語!定子の微笑み。
人々も、「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそよらざりつれ。 (控えていた他の)女房たちも、「そのような(漢詩の)ことは知っており、和歌などにまで詠みますけれど、(このように行動に移すとは)思いも寄りませんでした。 さる:そのような(連体詞)。
思ひこそよらざりつれ:「こそ」…「つれ(已然形)」の係り結び。否定「ず」連用「ざり」+完了「つ」已然形。
なほこの宮の人にはさべきなめり。」と言ふ。 やはり(清少納言さんは)この中宮様にお仕えする人としてふさわしい方のようですね。」と言う。 なほ:やはり。
さべきなめり:「さるべきなるめり」の撥音便無表記!「さるべき(ふさわしい)」+断定「なり」+推定「めり」。

たく先生の完全オリジナル現代語訳(情景が目に浮かぶ現代語訳)

【たく先生の読み解く完全現代語訳】

雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもとは違って御格子をお下ろし申し上げたままで、部屋の真ん中の炭櫃(大型火鉢)に炭火をおこし、女房たちが集まって世間話などをして(中宮定子様に)お仕えしていたときのこと。

定子様がふと私(清少納言)の方を向いて、「少納言よ、香炉峰の雪はどうなっているだろうね」とおっしゃいました。

その言葉を聞くやいなや、私はすぐに下女に言いつけて重い御格子を上げさせ、自ら進み出て御簾を高く巻き上げました。目の前に広がった一面の雪景色をご覧になって、定子様は実に満足そうに、誇らしげにお笑いになりました。

その場に居合わせた他の女房たちも、「そのような白居易の有名な漢詩のことは誰でも知っていますし、和歌の題材などに詠んだりもしますけれど、とっさにこのように御簾を上げて雪をお見せするなんて、まったく思いつきもしませんでした。やはり清少納言さんは、この定子様の後宮にお仕えする人として、誰よりもふさわしい方のようですね」と口々に称賛し合ったのでした。

定期テスト頻出!重要文法・品詞分解と敬語の完全攻略

ホワイトボードの前で香炉峰の雪の文法や敬意の方向を分かりやすく解説する高校教員のたく先生
定期テストで差がつく「ウ音便」「使役」「撥音便無表記」「敬意の方向」を解説

『香炉峰の雪』は文章こそ非常に短いものの、高校古典文法の最重要エッセンスがこれでもかというほど凝縮されています。定期テストで「あと10点・20点」を確実に上乗せするための文法ポイントを一挙に攻略しましょう!

一語一語の品詞分解一覧表(全単語の品詞・活用形・意味)

まずは全文の完全品詞分解です。テスト前の直前確認に活用してください。

【第1文】
雪[名詞]+ の[格助詞]+ いと[副詞]+ 高う[形容詞・ク活用「高し」連用形ウ音便]+ 降り[動詞・ラ行四段「降る」連用形]+ たる[助動詞・存続「たり」連体形]+ を[接続助詞]、
例ならず[連語(名詞「例」+断定「なり」連用+否定「ず」)]+ 御格子[名詞]+ まゐり[動詞・ラ行四段「まゐる」連用形・謙譲語]+ て[接続助詞]、
炭櫃[名詞]+ に[格助詞]+ 火[名詞]+ おこし[動詞・サ行四段「おこす」連用形]+ て[接続助詞]、
物語[名詞]+ など[副助詞]+ し[動詞・サ変「す」連用形]+ て[接続助詞]+ 集まり[動詞・ラ行四段「集まる」連用形]+ さぶらふ[動詞・ハ行四段「さぶらふ」連体形・謙譲語]+ に[接続助詞]、
【第2文】
「少納言[名詞]+ よ[間投助詞]、香炉峰[名詞]+ の[格助詞]+ 雪[名詞]+ いかなら[助動詞・断定「なり」未然形]+ む[助動詞・推量「む」連体形]。」+ と[格助詞]+ 仰せらるれば[動詞・サ行下二段「仰す」未然形+助動詞・尊敬「らる」已然形(最高敬語)]、
御格子[名詞]+ 上げ[動詞・ガ行下二段「上ぐ」未然形]+ させ[助動詞・使役「さす」連用形]+ て[接続助詞]、
御簾[名詞]+ を[格助詞]+ 高く[形容詞・ク活用「高し」連用形]+ 上げ[動詞・ガ行下二段「上ぐ」連用形]+ たれ[助動詞・完了「たり」已然形]+ ば[接続助詞・確定条件]、
笑は[動詞・ハ行四段「笑ふ」未然形]+ せ[助動詞・尊敬「す」連用形]+ たまふ[動詞・ハ行四段「たまふ」終止形・尊敬語(最高敬語)]。
【第3文】
人々[名詞]+ も[係助詞]、「さる[連体詞]+ こと[名詞]+ は[係助詞]+ 知り[動詞・ラ行四段「知る」連用形]、歌[名詞]+ など[副助詞]+ に[格助詞]+ さへ[副助詞]+ 歌へ[動詞・ハ行四段「歌ふ」已然形]+ ど[接続助詞]、
思ひ[動詞・ハ行四段「思ふ」連用形]+ こそ[係助詞]+ よら[動詞・ラ行四段「よる」未然形]+ ざり[助動詞・打消「ず」連用形]+ つれ[助動詞・完了「つ」已然形(係り結び)]。
なほ[副詞]+ この[連体詞]+ 宮[名詞]+ の[格助詞]+ 人[名詞]+ に[格助詞]+ は[係助詞]+ さべき[連語「さるべき」の撥音便脱落]+ な[助動詞・断定「なり」連体形撥音便「なん」の表記脱落]+ めり[助動詞・推定「めり」終止形]。」+ と[格助詞]+ 言ふ[動詞・ハ行四段「言ふ」終止形]。

テストで絶対に狙われる4大文法トラップ

高校の定期テストや共通テスト模試で、作問者が必ず出題する「4大文法トラップ」を徹底解説します。

① 「高う」の音便(ウ音便)

【元の形】 ク活用形容詞「高し」の連用形「高く」
【変化の理由】 「高く(takaku)」の「k」の音が脱落して「たかう(takau)」となり、ウ音便化して「高う」となったもの。
【テスト問われ方】 「『高う』の元の形を漢字仮名交じりで書き、音便の種類を答えよ」➔ 解答:高く/ウ音便

② 「上げさせて」の助動詞「さす」の識別(使役 vs 尊敬)

【使役か尊敬か】 助動詞「さす」には「使役(〜させる)」と「尊敬(お〜になる)」の2つの意味があります。直後に尊敬語(たまふ等)がないため、ここは100%「使役」です。
【なぜ使役なのか?】 平安貴族の邸宅にある「御格子」は非常に重く大きな木製の雨戸です。身分の高い女房である清少納言自身が力仕事をするのではなく、身分の低い下女や下人に命じて上げさせたため「上げさせて」となっています!
【テスト問われ方】 「『させ』の意味を答えよ。また、誰に上げさせたのか簡潔に説明せよ」➔ 解答:使役/下女(従者・下人)

③ 「さべきなめり」の撥音便無表記(テスト最難関!)

【元の形】 「さるべきなるめり」
【変化プロセス】
1. 「さるべき」の「る」が撥音便化して脱落 ➔ 「さ(ん)べき」➔ 「さべき」
2. 断定の助動詞「なり」連体形「なる」が推定「めり」に接続して撥音便化 ➔ 「なんめり」
3. 平安時代の仮名遣いでは撥音「ん」を表記しない習慣があったため、「ん」が脱落 ➔ 「なめり」
【テスト問われ方】 「『さべきなめり』をもとの形に直し、品詞分解せよ」➔ 解答:さるべき(連語・ふさわしい)+ なる(断定「なり」連体形)+ めり(推定「めり」終止形)

④ 「思ひこそよらざりつれ」の係り結びと助動詞

【係り結び】 係助詞「こそ」の結びで、文末の助動詞「つ」が已然形「つれ」になっています。
【助動詞の分解】 「ざり」は打消の助動詞「ず」の連用形。「つれ」は完了の助動詞「つ」の已然形。「思いつきもしなかった(まったく思い至らなかった)」という強い後悔・感嘆を含みます。

誰から誰への敬意?二重敬語・最高敬語の方向完全整理

敬語問題は定期テストの定番です。『香炉峰の雪』に出てくる敬語動詞の「種類(尊敬・謙譲)」「誰から誰への敬意か」を表にまとめました。

敬語表現 敬語の種類 敬意の方向(誰から誰へ) 現代語訳と解説
まゐりて 謙譲語 作者(女房たち)➔ 中宮定子 「お下ろし申し上げて」。格子を扱う動作をへりくだることで、部屋の主である定子を高める。
さぶらふ 謙譲語 作者(女房たち)➔ 中宮定子 「お仕えしている、控えている」。定子の御前に控えている状態をへりくだる。
仰せらるれば 最高敬語(二重敬語) 作者 ➔ 中宮定子 「おっしゃるので」。本動詞「仰す(尊敬)」+助動詞「らる(尊敬)」を重ねた最上級の敬意。
笑はせたまふ 最高敬語(二重敬語) 作者 ➔ 中宮定子 「お笑いになる」。助動詞「す(尊敬)」+補助動詞「たまふ(尊敬)」を重ねた最上級の敬意。

なぜ定子は笑ったのか?白居易(白楽天)の漢詩と文学的背景

唐代の廬山草堂で布団から簾を跳ね上げて雪の香炉峰を眺める詩人白居易
白居易が廬山草堂で詠んだ詩句「香炉峰雪撥簾看」の情景

ここからが読解の本番です。定期テストの記述問題で配点が最も高く、多くの受験生が部分点止まりになってしまう「なぜ定子は笑ったのか?」「なぜ清少納言は御簾を上げたのか?」という核心に迫りましょう。

元ネタとなった白居易の漢詩『香炉峰下新卜山居草堂初成偶題東壁』

定子の問いかけ「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」は、平安貴族の必読書であった中国・唐の詩人、白居易(白楽天)の詩集『白氏文集(はくしもんじゅう)』に収められた七言律詩の一節を踏まえたものでした。

【白居易の漢詩】香炉峰下新卜山居草堂初成偶題東壁(抜粋)
日高睡足猶燗熳、小閣重衾不怕寒。
遺愛寺鐘欹枕聴、香炉峰雪撥簾看。
【書き下し文】:
日は高く睡(ねむ)り足るも猶(な)ほ燗熳(かんまん)、小閣(しょうかく)に衾(ふすま)を重ねて寒さを怕(おそ)れず。
遺愛寺(いあいじ)の鐘は枕を欹(かたむ)けて聴き、香炉峰の雪は簾(すだれ)を撥(かか)げて看(み)る。
【現代語訳】:
日は高く昇り睡眠も十分にとったが、なおものんびりと寝床に横たわっている。小さな建物で布団を何枚も重ねているので寒さも怖くない。
(近くの)遺愛寺の鐘の音は、枕から頭を少し持ち上げて耳を傾け、(廬山の)香炉峰の雪景色は、手で簾を跳ね上げて眺めるのだ。

なぜ言葉で答えず「御簾を上げた」のか?清少納言の機知(ウィット)

定子は「香炉峰の雪はどうだろう」と問いました。もし清少納言が普通の女房なら、次のように答えていたはずです。

みちか
みちか

「定子さま、それは白居易の漢詩ですね!『簾を撥げて看る』と詩に詠まれておりますから、簾を上げて雪を見るべきでございます!」

たく先生
たく先生

そう!でもね、みちかさん。もしそうやって言葉で「漢詩の知識を解説」してしまったら、平安の宮廷では「無粋(ぶすい・野暮)」なんだ。

定子様は「漢詩の意味を知っているか?」とテストしたわけじゃない。「私が今、何を心の中で思い浮かべているか、あなたなら分かるわね?」と、知的で優雅なパスを投げたんだよ。清少納言は言葉で説明する代わりに、無言でスッと御格子を上げさせ、御簾を巻き上げて外の雪景色を見せた。詩句の通り「簾を撥げて雪を看る」という情景を、目の前でリアルに再現したんだね!

定子の「笑はせたまふ」に込められた真情(満足・感嘆・愛着)

清少納言の機知に満足げに微笑む中宮定子と阿吽の呼吸で通じ合うふたり
清少納言の鮮やかな機転に、満足と誇らしさを込めて微笑む中宮定子

作中の「笑はせたまふ(お笑いになる)」は、現代の「ギャグを聞いて大爆笑した」という意味ではありません。

💡 定子が「笑はせたまふ」理由(テスト記述の模範解答)
定子は、自分が投げかけた白居易の漢詩を踏まえた問いかけの意図を、清少納言が瞬時に理解し、言葉で説明するのではなく「御簾を高く上げる」という最も優雅で機知に富んだ行動で即座に応えてくれたことに深く満足し、感心したから。

定子にとって清少納言は、単なる使用人の女房ではありませんでした。自らの知的好奇心を満たし、阿吽の呼吸で共鳴できる最高のパートナー(魂の共鳴者)だったのです。定子の誇らしげな微笑みには、「さすがは私の見込んだ少納言だ」という深い愛着と信頼が満ちあふれていたのです。

定期テスト予想問題5選!現役高校教員が本気で作成した解答・解説

現役高校国語教員として、定期テストで実際に出題される形式に完全準拠した「予想問題5選」を作成しました。クリックすると模範解答と思考プロセスが開きます。テスト直前の腕試しとして必ず解いておきましょう!

📝 【問1】文法問題(ウ音便と活用形)

傍線部(ア)「雪のいと高う降りたるを」について、次の各問いに答えよ。
(1) 傍線部(ア)の基本形(終止形)を漢字仮名交じりで書け。
(2) 傍線部(ア)で起こっている音便の名称を漢字で答えよ。また、音便化する前の本来の形を漢字仮名交じりで書け。

▶ 模範解答と思考プロセスを見る
【模範解答】
(1) 高し
(2) 音便の名称:ウ音便 / 音便化前の形:高く

【教員の思考プロセス】
ク活用形容詞「高し」の連用形は「高く」。後ろに動詞「降り」が続くことで、発音の便宜上「k」が脱落し「たかう」となり、ウ音便化して「高う」となります。定期テストの定番中の定番問題です!
📝 【問2】文法・使役識別問題(動作主の特定)

傍線部(イ)「御格子上げさせて」について、次の各問いに答えよ。
(1) 助動詞「させ」の意味を答えよ。
(2) 清少納言は誰に御格子を上げさせたのか。適当な語句を現代語で答えよ。

▶ 模範解答と思考プロセスを見る
【模範解答】
(1) 使役(〜させる)
(2) 下女(従者・下人・身分の低い者)

【教員の思考プロセス】
「させ」の直後に尊敬語(たまふ等)がないため、最高敬語ではなく純粋な「使役」です。御格子は重いため、清少納言自身ではなく身分の低い下女に上げさせました。この「使役の動作主」を問う問題は超頻出です!
📝 【問3】敬語問題(敬意の方向と最高敬語)

傍線部(ウ)「仰せらるれば」および傍線部(エ)「笑はせたまふ」について、それぞれ誰から誰への敬意か答えよ。

▶ 模範解答と思考プロセスを見る
【模範解答】
傍線部(ウ):作者(清少納言) ➔ 中宮定子
傍線部(エ):作者(清少納言) ➔ 中宮定子

【教員の思考プロセス】
どちらも尊敬の助動詞や補助動詞を重ねた「最高敬語(二重敬語)」です。動作主はいずれも中宮定子であり、地の文であるため敬意の送り手は「作者(清少納言)」となります。
📝 【問4】内容読解・記述問題(行動の理由)

定子の「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」という言葉に対し、清少納言が「御簾を高く上げた」のはなぜか。定子の問いかけの意図と白居易の漢詩を踏まえて、50字以内で説明せよ。

▶ 模範解答と思考プロセスを見る
【模範解答】
白居易の詩句「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」を踏まえ、言葉ではなく行動でその情景を再現して見せるため。(49字)

【採点基準(部分点ポイント)】
・「白居易の漢詩(香炉峰の雪は簾を撥げて看る)」を踏まえていること(必須・3点)
・「言葉ではなく行動で情景を再現した」「定子に雪を見せた」という行動の意図(必須・4点)
📝 【問5】文法難問(「さべきなめり」の解釈と品詞分解)

傍線部(オ)「なほこの宮の人にはさべきなめり」について、次の各問いに答えよ。
(1) 傍線部(オ)を音便化前の元の形に直してすべて仮名で書け。
(2) 傍線部(オ)の現代語訳として最も適切なものを次から選べ。
 ア:そうするべきではないようだ
 イ:ふさわしい方のようである
 ウ:そうなる運命であったようだ
 エ:仕えるべきではないらしい

▶ 模範解答と思考プロセスを見る
【模範解答】
(1) さるべきなるめり
(2) イ(ふさわしい方のようである)

【教員の思考プロセス】
「さるべき」は「適任だ・ふさわしい」という意味の超重要重要連語です。それに断定の助動詞「なり」の連体形「なる」がつき(撥音便化して「なん」となり「ん」が表記脱落)、推定の助動詞「めり」がついた形です。この問題が解ければ、学年トップの成績を狙えます!

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『香炉峰の雪』をはじめとする『枕草子』の定期テスト頻出事項(3大分類、助動詞識別、重要古文単語、背景知識)を最速でマスターするために、AI暗記アプリ「PathMemoria」の公式学習デッキを用意しました。

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まとめと『枕草子』クラスタ関連記事

『香炉峰の雪』は、清少納言の知性と機知の輝きを描いただけでなく、中宮定子と清少納言の間に通い合っていた深い魂の共鳴を鮮やかに切り取った永遠の名場面です。

当時の宮廷において、女性が漢詩を深く理解し、それを即座に行動で表現することは極めて珍しいことでした。しかし、定子のサロンではそうした女性の知性が温かく歓迎され、互いを高め合う自由な空気が満ちていました。『枕草子』が千年の時を超えて今なお私たちを魅了し続けるのは、この生き生きとした知性の輝きがあるからに他なりません。

📚 『枕草子』の全体像・他の重要章段もあわせてチェック!
『枕草子』の3大分類(類聚・随想・日記)や、清少納言の美意識「をかし」、中宮定子との絆、定期テスト頻出の名場面BEST8をすべてまとめた総合ガイド記事はこちらです。
👉 【枕草子のあらすじ・重要章段まとめ】3分類・登場人物・をかしの美意識を教員が徹底解説!

あわせて読みたい『枕草子』の代表的な章段はこちら:

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ABOUT ME
たく先生
たく先生
現役高校教師 / 国語科
指導歴20年以上。西日本の私立高校で、古典と「最短ルートで合格する勉強法」を教えています。 教師の枠を超え、FP2級・簿記3級も取得。「賢く学び、賢く生きる」ための知識を、本音で発信します。
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