記憶術場所法のやり方|勉強や暗記が驚くほど楽になる方法

「テストや資格の勉強で覚えることが多すぎる…」「もっと効率的な記憶術はないだろうか?」と感じていませんか。
この記事では、そんな悩みを解決するかもしれない「記憶術の場所法のやり方」について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
そもそも場所法とは何か、という基本的な知識から、具体的なトレーニング方法、そして多くの人がつまずきがちな「記憶の場所が足りない」問題の解決策まで、幅広くカバーします。
特に、場所法を勉強や、なかなか覚えられない英単語の暗記にどう活かすのか、その実践的なテクニックを詳しくご紹介します。この記事を読めば、あなたも記憶の達人への第一歩を踏み出せるはずです。
基本から学ぶ記憶術場所法のやり方
まずは知りたい場所法とは?

記憶術の「場所法」とは、自分がよく知っている場所や風景と、覚えたい情報を結びつけて記憶するテクニックのことです。この方法は非常に歴史が古く、「記憶の宮殿(マインドパレス)」や「ジャーニー法」といった別名でも知られています。
例えば、買い物リストの「卵、牛乳、パン」を覚えたい場合、自宅の玄関に「巨大な卵」が転がり、リビングのソファで「牛」がくつろぎ、お風呂が「パン」で満たされている、といった具合にイメージを配置します。そして、家の中を歩き回る想像をすることで、順番通りに思い出すことができるのです。
この記憶術の最大の特長は、人間の脳が元々持っている「空間を認識し記憶する能力」を利用している点にあります。3日前の夕食は忘れても、子供の頃に通った通学路の風景を鮮明に思い出せるように、場所に関する記憶は非常に忘れにくい性質を持っています。場所法は、その脳の特性を最大限に活用した、合理的かつ強力な方法と言えるでしょう。
場所法のポイント
覚えたい情報を、見慣れた場所のイメージとリンクさせることで、記憶に定着させる方法です。特別な才能は必要なく、誰でもトレーニングによって習得できます。
古代ギリシャから伝わるその起源

場所法の起源は、紀元前5世紀ごろの古代ギリシャの詩人シモニデスにまで遡ると言われています。彼の経験したある出来事が、この記憶術が生まれるきっかけとなりました。
ある日、シモニデスは貴族が主催する宴会に招かれ、詩を披露しました。彼が一時的に建物の外へ出た瞬間、大地震が起こり天井が崩落。建物内にいた多くの人々が亡くなってしまいました。遺体は損傷が激しく、誰が誰だか判別できない悲惨な状況でした。
しかし、唯一の生存者であったシモニデスは、誰がどの席に座っていたかを正確に覚えていました。彼は、座席の配置という「場所の情報」を手がかりに、全ての遺体の身元を特定し、遺族のもとへ返すことができたのです。
この出来事から、シモニデスは「場所と情報を結びつけると、記憶に残りやすい」という原理を発見し、場所法が体系化されていきました。何千年もの時を超えて受け継がれてきた、非常に由緒ある記憶術なのです。
現代では、記憶力を競う「メモリースポーツ」の世界選手権に出場するアスリートのほとんどが、この場所法を駆使して驚異的な記憶力を発揮しています。
効率的に覚えられる場所法のメリット

数ある記憶術の中でも、場所法が特に優れている点として、主に3つのメリットが挙げられます。いずれも脳の仕組みに根ざした、科学的な裏付けのある利点です。
シンプルで誰でも始めやすい
場所法は、非常にシンプルで実践しやすいのが特長です。「自分がよく知っている場所」さえあれば、特別な道具や才能は一切必要ありません。「場所を用意する」「情報をイメージ化して結びつける」という基本的な流れに慣れれば、誰でもすぐに多くの情報を覚えられるようになります。
科学的にも証明された効率性
場所法の有効性は、近年の脳科学研究によっても証明されています。2017年にオランダのラドバウド大学の研究チームが発表した研究では、被験者が場所法のトレーニングを40日間行った結果、暗記できる単語の数が平均27個から63個へと、2倍以上に増加しました。
(参照:Neuron「Mnemonic Training Reshapes Brain Networks to Support Superior Memory」)
これは、場所を記憶する脳の部位「海馬」が活性化されるためで、2014年には、この空間認識に関する脳細胞の発見がノーベル生理学・医学賞を受賞しており、場所法の科学的な信頼性は非常に高いと言えます。
一度習得すれば長く使える
前述の研究では、トレーニングを終えてから4ヶ月後に再度テストを行ったところ、場所法を学んだグループは依然として高い記憶力を維持していました。これは、場所法が単なる一時的なテクニックではなく、一度身につければ半永久的に使えるスキルであることを示しています。
短期記憶を長期記憶へ
場所法は、脳の仕組みに適した方法であるため、単に情報を覚えるだけでなく、その情報を忘れにくい「長期記憶」として定着させやすいという大きなメリットがあります。
ステップ1:記憶の宮殿を用意する

ここからは、場所法の具体的なやり方を3つのステップに分けて解説します。最初のステップは、記憶の置き場所となる「記憶の宮殿(マインドパレス)」を用意することです。
「宮殿」と聞くと難しそうに感じますが、要は自分が細部まで鮮明に思い出せる場所であれば何でも構いません。まずは、最も馴染み深いであろう「自宅」を使うのがおすすめです。
記憶の宮殿の作り方
- 場所を選ぶ:自宅、通勤・通学路、オフィス、学校、よく行くカフェなど、頭の中で隅々まで歩き回れる場所を選びます。
- ルートを決める:スタート地点とゴール地点を決め、場所をたどる順番(ルート)を固定します。例えば自宅なら「玄関→廊下→トイレ→リビング→キッチン」のように、一方通行のルートを決めましょう。
- 置き場所(プレイス)を番号付けする:ルートに沿って、情報を配置する具体的な「置き場所(プレイス)」を決め、番号を振っていきます。プレイスは「リビングのソファ」「キッチンのシンク」のように、具体的で特徴的なものを選びます。
覚えたい情報の数だけ、この「置き場所」を用意する必要があります。最初に10個程度のプレイスを持つルートを一つ作ってみることから始めると良いでしょう。
ルート設定のコツ
ルートは時計回りや、上から下へなど、常に一定の規則性を持たせると、思い出すときに混乱しにくくなります。一度決めたルートとプレイスは変えずに使い続けることが重要です。
ステップ2:覚えたいものと結びつける

記憶の宮殿が用意できたら、次のステップとして、覚えたい情報と宮殿の各置き場所(プレイス)をイメージで結びつけていきます。この「イメージ化」こそが、場所法における最も重要な工程です。
ただ単に「玄関に卵がある」と考えるだけでは、記憶には残りません。記憶を強固にするためには、五感をフル活用し、感情が揺さぶられるような強烈なイメージを作ることが不可欠です。
記憶の専門家であるエラン・カッツ氏は、「イメージがバカバカしいほどオーバーであるほど、スムーズに覚えやすい」と述べています。常識を捨てて、楽しみながらイメージを作りましょう!
強烈なイメージを作るコツ
- 巨大化・縮小化:玄関のドアよりも巨大なリンゴ、手のひらサイズの自動車など。
- 大量化:トイレの便器から何百万匹ものアリがあふれ出している。
- あり得ない組み合わせ:冷蔵庫の中でペンギンがテレビを見ている。
- 擬人化:ポストが苦しそうにうめき声をあげながら手紙を食べている。
- 動きや音、匂いを加える:腐った魚の強烈な匂い、ガラスが割れるけたたましい音など。
例えば、「卵」を「寝室のベッド」に置くなら、「シルクのシーツの上に生卵が叩きつけられ、黄身がドロリと流れ出している」というように、質感や色、音、感触までリアルに想像します。このインパクトの強さが、記憶の定着率を左右するのです。
ステップ3:場所をたどり思い出す

最後のステップは、頭の中で記憶の宮殿を歩き回り、配置した情報を順番に思い出していく作業です。
ステップ1で決めたルートに従って、スタート地点である「玄関」から想像上の散歩を始めます。それぞれの置き場所(プレイス)にたどり着くたびに、「ここに何を置いただろうか?」と自問し、ステップ2で作った強烈なイメージを再現します。
ルート(場所) | 思い出すイメージ | 記憶した情報 |
---|---|---|
① 寝室のベッド | 黄身がドロリと割れている… | 卵 |
② トイレの便器 | ベーコンが張り付いている… | ベーコン |
③ 風呂場の浴槽 | ケチャップで満たされている… | ケチャップ |
④ リビングのソファ | 牛が座ってくつろいでいる… | 牛乳 |
ステップ2でしっかりと鮮明なイメージが作れていれば、驚くほどスムーズに思い出せるはずです。もし、うまく思い出せない場所があれば、それはイメージが弱かった証拠なので、よりインパクトの強い、突飛なイメージに作り直しましょう。
この「思い出す」という作業自体が、記憶を定着させるための非常に効果的な復習になります。最初はゆっくりでも構いません。このプロセスを数回繰り返すことで、記憶はより強固になり、長期的な記憶として脳に刻み込まれていきます。
思い出すことについてはこちらの記事で具体的に効果を説明しています。

記憶術場所法のやり方を実践で活かす
場所法は勉強の効率を上げる

場所法は、買い物リストのような単純な暗記だけでなく、資格試験や大学受験といった本格的な勉強においても絶大な効果を発揮します。歴史の年号や化学式、法律の条文など、一見すると無味乾燥な情報も、場所法を使えば効率的に記憶することが可能です。
勉強に活用する際のポイントは、覚えたい抽象的な情報や専門用語を、具体的な「モノ」や「キャラクター」に変換することです。これを「イメージ化」の応用テクニックと呼びます。
抽象的な情報の変換例
- 省エネ機能 → 地球に優しいイメージから「地球儀」
- AIによるサポート → 人工知能の象徴として「ロボット」
- 法律(憲法第9条) → 鳩が飛んでいるイメージから「平和の象徴の鳩」
例えば、自社製品のスペックを覚える場合、「瞬間冷凍機能」という情報を「中学校の校舎がカチカチの氷に覆われている」というイメージに変換し、通勤路のプレイスに配置します。このように一度具体的なモノに置き換えることで、場所法をスムーズに適用できるようになるのです。
この変換作業には少し慣れが必要ですが、ゲーム感覚で連想を広げることで、創造力も鍛えられます。勉強が「つらい作業」から「楽しい知的パズル」へと変わるきっかけにもなるでしょう。
難しい英単語を覚える応用テクニック

多くの学習者が苦手とする英単語の暗記も、場所法を使えば劇的に効率化できます。特に、意味が似ていて混同しやすい単語や、スペルが複雑な単語を覚える際に有効です。
英単語を覚える場合も、勉強のときと同様に「変換」のテクニックが鍵となります。単語の意味や響きから、具体的なイメージを連想するのです。
英単語の変換テクニック例
- 意味から連想:「inquiry(問い合わせ)」→ 受付で質問している「探偵」のイメージ。
- ダジャレ・語呂合わせ:「approve(承認する)」→ 「あ、プール」に入ることを親に承認してもらっている子供のイメージ。
『記憶王が伝授する 場所法 英単語』の著者で記憶力日本チャンピオンの青木健氏も、こうしたイメージ化と場所法を組み合わせることで、効率的な単語学習を提唱しています。

意外性のあるダジャレの方が、かえって記憶に残りやすいものですよ。
そして、変換したイメージを記憶の宮殿に配置していきます。例えば、「旅行で使う単語」というテーマで10個の単語イメージを作り、それらを「駅のホーム」の各プレイスに置いていく、といった使い方です。こうすることで、単語をグループでまとめて記憶でき、思い出すときもスムーズになります。
上達に欠かせないイメージ化トレーニング

これまで見てきたように、場所法を使いこなす上で最も重要なスキルが「イメージ化」の能力です。覚えたい情報を、いかに素早く、そして強烈なイメージに変換できるかが、記憶の効率と定着率を大きく左右します。
このイメージ化能力は、特別な才能ではなく、トレーニングによって誰でも向上させることが可能です。日常生活の中でできる簡単なトレーニングをいくつかご紹介します。
日常でできるトレーニング方法
- 街中連想ゲーム:街を歩きながら目についた看板や標識の言葉を、片っ端から具体的なモノに変換してみます。「修理」→「スパナ」、「美容室」→「ハサミ」のように、瞬時に連想する癖をつけましょう。
- 抽象語チャレンジ:「恋愛」「平和」「経済」といった、形のない抽象的な言葉を紙に書き出し、それを象徴する具体的なモノや状況を1分以内でいくつ思いつけるか、というゲームをします。
1日5分のトレーニング
記憶術の専門家である宮口公寿氏は、1日5分、10~30個の言葉を具体物に置き換える練習を推奨しています。通勤電車の中や、ちょっとした待ち時間にできるこの簡単なトレーニングを続けるだけで、イメージ化のスピードと質は格段に向上します。
このトレーニングは、場所法だけでなく、あらゆる記憶術の基礎となるものです。継続することで、脳が活性化し、発想力や思考の柔軟性も高まるという副次的な効果も期待できます。
記憶の場所が足りないときの増やし方

場所法を本格的に活用し始めると、多くの人が「記憶の宮殿(場所)が足りない」という問題に直面します。特に、一度に大量の情報を覚えようとすると、すぐに手持ちのプレイスを使い切ってしまうことがあります。
しかし、心配は不要です。記憶の宮殿は、自分の記憶の中だけでなく、工夫次第で無限に増やすことが可能です。
記憶の宮殿を増やす方法
- 過去の記憶を掘り起こす:子供の頃に住んでいた家、卒業した学校の校舎、昔よく行った祖父母の家など、過去の記憶を辿れば、使える場所はたくさん眠っています。
- 新しい場所を開拓する:いつも利用する駅の構内、近所のショッピングモール、図書館、学校など、意識して観察すれば新たな宮殿の候補は見つかります。
- 架空の場所を利用する:好きなアニメや映画、ゲームの世界を記憶の宮殿にすることも有効です。間取りが頭に入っているなら問題なく使えます。
- Googleストリートビューを活用する:自宅にいながら、世界中のあらゆる場所を記憶の宮殿にできます。ホワイトハウスやヴェルサイユ宮殿の中を探検し、自分だけの豪華な宮殿を作ることも可能です。
場所の使い回しは避ける
初心者のうちは、一度使った場所に、すぐに別の情報を上書きするのは避けるべきです。前の情報のイメージ(ゴースト)が残っていると、記憶が混乱する原因になります。覚える事柄が変わるたびに、新しい場所を用意するのが上達への近道です。
まとめ:記憶術場所法のやり方を習得しよう
- 場所法は記憶の宮殿とも呼ばれる記憶術
- よく知る場所と覚えたい情報をイメージで結びつける
- 起源は古代ギリシャの詩人シモニデスに遡る
- 脳の空間認識能力を利用した科学的に合理的な方法
- メリットはシンプルで効率が良く長く使える点
- やり方は「場所の用意」「結びつけ」「思い出す」の3ステップ
- 場所は自宅や通勤路など鮮明に思い出せる場所を選ぶ
- 情報を結びつける際は強烈でオーバーなイメージが重要
- 勉強や専門用語は具体的なモノに変換して覚える
- 英単語は意味や語呂合わせからイメージを連想する
- 上達の鍵はイメージ化能力のトレーニングにある
- 街中の言葉で連想ゲームをするのが効果的
- 場所が足りないときは過去の記憶や架空の場所を活用する
- Googleストリートビューで宮殿を無限に増やせる
- 習得すれば勉強や仕事の効率が飛躍的に向上する






