漢文「願望形」を完全攻略!読み方・意味・否定まで徹底解説

こんにちは。ミチプラス運営者の「たく先生」です。
高校生の皆さん、あるいは学び直しをしている大人の皆さん、漢文の学習は順調に進んでいますか?
漢文の句法(文法)には、「使役」や「受身」、「反語」といったメジャーな単元があります。それらに比べて少し影が薄いけれど、共通テストの選択肢や国公立二次の記述問題で出題されると、一気に正答率が下がるのが、今回解説する「願望形」です。
特に「願」や「欲」といった漢字は、現代語の感覚で「なんとなく」読んでしまいがち。しかし、漢文の世界では、この「なんとなく」が命取りになります。「誰が誰に願っているのか」「文末はどう活用するのか」というルールを知らないと、まったく逆の意味で誤読してしまうからです。

例えば、「願」という字を見たとき、あなたは瞬時に「これは自分の決意だ(~ん)」とか「これは相手への懇願だ(~せよ)」と判断できていますか?
この判断スピードが、試験本番での得点力を左右します。
この記事では、現役教師である私が授業で生徒たちに伝授している「迷わずに正解を導き出す思考フロー」と、「リズムの良い覚え方」を完全公開します。
漢文の願望形を基礎から完全解説
まずは、願望形の基本となる漢字の使い分けから見ていきましょう。漢文における願望は、単純に「~したい」という気持ちを表すだけではありません。「誰の動作なのか(主体)」「どれくらい切実なのか(深度)」、そして「文法的な構造」によって、使う漢字や形が厳密に異なります。ここを整理するだけで、読解のスピードは格段に上がります。
願望形の基本的な意味と分類

漢文の願望表現をマスターするためには、まず大きく分けて二つのタイプが存在することを理解する必要があります。ここを混同していると、いつまでたっても「なんとなくの雰囲気読み」から抜け出せません。
1. 動詞的願望形
これは、「願(ねがふ)」「欲(ほっす)」「請(こふ)」のように、その漢字自体が「~したい」「~してほしい」という語彙的な意味を持っているものです。
英語で言えば “want” “hope” “request” にあたる、非常にストレートな表現です。文頭や動詞の前に置かれ、文全体の「こうしたい!」という方向性を決定づけます。まずはこのグループの基本用法を完璧にすることが先決です。
2. 修辞的願望形
こちらは少し高度です。「安得(いづくんぞ~をえん)」のように、形式上は「疑問」や「反語」の形をとっているのに、文脈としては「(実際には手に入らないけれど)どうにかして~したいものだ」という強い、そしてしばしば悲痛な願いを表すパターンです。
直訳すると「どうして手に入ろうか(いや、入らない)」となりますが、そこで終わってはいけません。「手に入らないからこそ、欲しいのだ」という裏側の心理まで読み取る必要があります。これは直訳では意味が通じないため、明確な文法知識と文脈把握力が不可欠です。
この記事では、まず基礎となる「動詞的願望形」を固め、その後に応用となる「修辞的願望形」を解説していきます。
「願」の読み方と訳し分けのコツ

願望形の中で最も代表的であり、かつ入試頻出度No.1なのが「願」です。
書き下し文では「願はくは(ねがはくは)」と読みます。この読み方は絶対に覚えてください。「ねがわくは」と発音しますが、歴史的仮名遣いでは「は」を使う点も、記述試験での小さな落とし穴です。
この「願」の最大の特徴にして、受験生を悩ませるポイントは、「文末の活用によって意味と訳し方が完全に変わる」という点です。ここが試験で最も狙われやすいポイントなので、以下の表と解説で完璧に頭に叩き込んでおきましょう。

| 文脈・対象 | 文末の形(活用) | 意味・ニュアンス | 例文と解説 |
|---|---|---|---|
| 自己の希望 (自分のこと) | 未然形 + ん | どうか~したい (強い意志・自己実現) | 「願はくは連理の枝と為らん」 (私は生まれ変わっても、あなたと連理の枝になりたい) ※主語は「私」。自分の希望を述べている。 |
| 他者への要求 (相手のこと) | 命令形 (せよ・れ) | どうか~してください (懇願・勧誘・要請・他者への希望) | 「願はくは大王急ぎ渡れ」 (大王様、どうか急いで川を渡ってください) ※主語は「大王」。相手に行動を促している。 |
自己の希望(~ん):自分の意志を表明する
文末が「~ん(意志の助動詞)」で終わっている場合、それは話し手自身の「こうなりたい」「こうしたい」という強い決意や希望を表します。
有名な白居易の『長恨歌』にある「天に在りては願はくは比翼の鳥と作り、地に在りては願はくは連理の枝と為らん」という一節は、まさにこれです。「(私たちが)こうなりたい」という愛の誓いですね。
他者への要求(~せよ):相手に行動をお願いする
一方で、文末が命令形になっている場合は、相手に対するお願いです。漢文において「命令形」というと、「~しろ!」という強い口調をイメージするかもしれませんが、「願」とともに使われる場合は、「どうか~してください」という丁寧な懇願のニュアンスになります。
『史記』などで、部下が王様に対して必死に策を提案する場面などでよく使われます。
ここがポイント!
文末を見るだけで、その文が「自分の夢」を語っているのか、「相手への頼み事」なのかが一発で分かります。
自分のことなら「~ん」、相手への願いなら「~せよ(命令形)」。
この「人称」と「文末」のセットを意識するだけで、読解の精度がグッと上がります。
「欲」における意志と将然の違い

次に頻出するのが「欲」です。読み方は「~(せ)んと欲す」ですね。
現代語で「欲しい」といえば、「新しいゲームが欲しい」「水が欲しい」といった所有欲求をイメージしますが、漢文の「欲」は英語の “want to do” に近く、動作を伴う願望を表します。
しかし、漢文ではそれ以上に重要な「アスペクト(動作の局面)」を表す機能を持っています。「欲」が出てきたら、反射的に次の二つの可能性を疑ってください。
1. 意志・願望
「~したいと思う」「~しようとする」という意味です。これはイメージ通りでしょう。主語が人間である場合、あるいは擬人化された動物である場合に使われます。
例:「君子は言に訥にして、行ひに敏ならんと欲す。」(君子は口は重く、行いは敏捷でありたいと願う)
ここでは、君子(人間)が自分の理想像に近づきたいという意志を持っています。
2. 近未来・将然
こちらが受験生を苦しめる曲者です。「将然(しょうぜん)」とは、「まさに~んとす」と同じで、「今にも~しそうだ」「~になりかかっている」という意味を表します。

えっ、「欲」なのに「~しそうだ」ってどういうことですか?「願い事」の漢字なのに、願ってないんですか?

いい質問ですね、みちかさん。そこが漢文の面白いところであり、難しいところなんです。
例えば、主語が「花」や「雨」や「風」だったらどうでしょう。「花が咲きたいと願っている」とか「山が燃えたいと思っている」と訳すと、ちょっと詩的すぎて、論理的な文章では不自然ですよね。
主語が植物や自然現象などの「非情物(心を持たないもの)」のときは、その事態が今にも起きそうだという「状況の変化」を表します。
例:「山青くして花然(も)えんと欲す。」
これを「花が燃えたいと願っている」と訳しては×です。正解は「花が(真っ赤に咲き誇って)今にも燃えるようになりそうだ」となります。
「主語が人間なら願望、自然物なら将然」。この原則をまずは押さえておきましょう。(※人間が主語でも、瀕死の状態などで「死なんと欲す(今にも死にそうだ)」となる例外もあるので、最終的には文脈判断です!)

【重要】「欲」と「将」の完全比較

ここで、少し先取り学習になりますが、入試で最も「欲」と混同されやすい漢字である「将」との違いを整理しておきましょう。
どちらも「今にも~しそうだ」という意味を持っていますが、読み方とニュアンスに決定的な違いがあります。
| 漢字 | 読み方(書き下し) | 意味の重点 | 主語の傾向 |
|---|---|---|---|
| 欲 | ~(せ)んと欲す | ①願望(~したい) ②将然(~しそうだ) | ①人間 ②自然物 |
| 将 | 将に~(せ)んとす | ①将然(今にも~しそうだ) ②意志(~するつもりだ) | 文脈によるが 「切迫した状況」で多用 |
最大の違いは「読み方」です。
- 「将」は再読文字なので「まさに」と読みます。
- 「欲」は再読文字ではないので「まさに」とは読みません。
白文(訓点がない文)で出題されたとき、「将」があれば「まさに~んとす」、「欲」があれば「~んとほっす」。
意味は似ていても読み方が全く違うので、ここを混同しないようにセットで覚えてしまいましょう。
試験での識別ポイント
Q. 「花」が主語のときはどっち?
A. どちらも使えます。「花 欲 然(花燃えんと欲す)」も「花 将 然(花まさに燃えんとす)」も、意味は「今にも咲きそうだ」で同じです。
Q. 「私」が主語のときは?
A. 「~したい」という願望なら「欲」、「~するつもりだ」という予定・決意なら「将」が使われる傾向があります。
再読文字についてはこちらに詳しくまとめています。

「請」を用いた相手への要求表現

「請」は、現代語の「請求」や「請願」につながる漢字で、書き下し文では「請ふ(こふ)」と読みます。
この漢字の役割を理解するには、英語の “Please” や “Let me”、あるいは “I request” をイメージすると分かりやすいでしょう。
「請」もまた、「誰が動作をするのか」という判定が非常に重要です。大きく分けて2つのパターンがあります。
1. 自己の動作の許可
「(私に)~させてください」というパターンです。
目上の人に対して、自分が何か発言したり、行動したりする許可を丁寧に求めるときに使います。
例:「請ふ戦ひを以て喩へん。」(どうか、戦争に例えて説明させてください)
この場合、直後に続く動作(ここでは「喩へん(説明する)」)の主体は、話し手自身(私)です。
2. 相手への動作の要求
「(あなたが)~してください」というパターンです。
相手に対して具体的な行動を促すときです。文末が命令形になることが多いのが特徴です。
例:「請ふ瑟を奏せよ。」(どうか、瑟(しつ)という楽器を演奏してください)
この場合、演奏するのは話し手ではなく、聞き手(相手)です。
注意点
「請」の後ろに続く動詞を見て、その動作を「誰がやるのか」を文脈から補う癖をつけましょう。ここを取り違えると、話の筋がまったく逆になってしまいます。
「庶幾」など切実な願いの読み方
少しレベルの高い語彙として、難関大を目指すなら絶対に覚えておきたいのが「庶幾」です。
読み方は「庶幾はくは(こひねがはくは)」と読みます。非常に長い読み方なので、センター試験や共通テストの「読み問題」としても狙われやすい語です。
「願」よりもさらに切実で、祈りに近いような強いニュアンスを含みます。王様に対して命がけで諫言(かんげん:過ちを指摘して直させること)をする場面などで、「王様、どうか、どうかこれだけは直してください!」という必死の思いを伝えるときに使われます。
また、「庶幾」の二文字だけでなく、「冀」「庶」の一文字でも「こひねがはくは」と読ませることがあります。
語源の豆知識
「庶」や「幾」はもともと「近い」という意味を持っています(幾何学、庶民など)。そこから「理想の状態に近くあってほしい」→「(現状は遠いけれど)~であればいいのに」という願望の意味が生まれたと言われています。
こう考えると、難しい漢字も「理想に近づきたい」という語源イメージで少し身近に感じませんか?
漢文の願望形で得点アップする秘訣
ここからは応用編です。基礎的な句法を押さえた上で、さらに偏差値を上げるための「差がつくポイント」を解説します。ライバルたちが読み落としがちな「反語表現」や「否定形」をマスターして、得点源にしましょう。
安得などの反語による願望表現

漢文の世界では、ストレートに「欲しい」と言わずに、あえて反語を使って逆説的に強い願望を表すことがあります。その代表格が「安得(いづくんぞ~をえん)」です。
この表現は、構造としては「安(いづくんぞ)~(反語)」+「得(う)」の形をとっています。
直訳すると「どうして~を手に入れられようか、いや手に入れられない」となります。
しかし、ここには筆者の深い嘆きと、「手に入らないからこそ、なんとかして手に入れたい!」という強い渇望が隠されているのです。
代表的な例文:『大風歌』
漢の高祖・劉邦が天下統一後に詠んだ詩の一節はあまりにも有名です。
原文:安得猛士兮守四方
書き下し:安くんぞ猛士を得て四方を守らしめんや(守らしむるを得ん)
現代語訳:(私の周りには頼りになる部下がいない。)どうにかして勇敢な兵士を手に入れて、国境を守らせたいものだ。
ここでは、「いない」という欠乏感が、「ほしい」という願望をより強調しています。「どうして~か(反語)」と訳して終わらせてしまうと、この裏にある「欲しい!」という叫びを見落としてしまいます。「安得」を見たら「願望」。これを反射神経で思い出せるようにしておきましょう。
意外と問われる願望形の否定

「~したい」の逆、「~したくない」や、「~してはいけない」という否定の形も、試験では狙われやすいポイントです。特に「禁止」の形は、見慣れていないと対応できません。
1. 意志の否定:「不欲」
「欲」の前に否定語の「不」がついた形です。
書き下し:「~(せ)んと欲せず」
意味:「~したいと思わない」「~するつもりはない」
これはシンプルですね。英語の “do not want” と同じ感覚で処理できます。「私はそれをしたくない」という個人の拒絶を表します。
2. 願望の禁止:「~ふこと毋かれ」
これは少し特殊ですが、「願うこと自体を禁止する」形です。非常に道徳的、教訓的な文章で出てきます。
書き下し:「~ふこと毋(な)かれ」
意味:「~することを願い求めるな」
「毋(なかれ)」は強い禁止を表す言葉です。
例:「子入らんことを索むるを幾ふ毋かれ。」
(あなたは、そこに入ることを求め願ってはいけない。)
これは、「願望形」というよりは、「願望を表す動詞(幾ふ)を禁止している」と解釈するのが正しいでしょう。「楽して成功したいと願うな」のように、心の持ちようを戒める場面で使われます。
リズムで定着させる効率的な覚え方

ここまでたくさんのルールを解説してきましたが、「多すぎて覚えきれない…」「試験中に混乱しそう…」という不安もあるかと思います。
そこで、私が授業でも教えている、リズムで覚える「二刀流暗記法」を伝授します。試験中に迷ったら、このフレーズを心の中で唱えてください。
「願」の二刀流暗記法
「自分はン、相手はセヨ」
解説:
- 自分のこと(主語が私)なら、文末は「~ん」
- 相手へのこと(主語があなた)なら、文末は「~せよ」
「願はくは」の後に続く言葉が、自分のことなら「~ん」、相手への頼みなら「~せよ」。これだけ覚えておけば、大半の読解問題はクリアできます。単純ですが、最強のルールです。
また、「欲」の送り仮名についても、「欲張りなんと欲す」という語呂合わせを覚えておくと、「~んと」という送り仮名を書き落とすミスを防げます。「行かん欲す」ではなく「行かんと欲す」。この「と」が採点基準になることが多いので注意しましょう。
頻出例文を使った書き下し文対策
最後に、記述試験で減点されないための書き下し文の細かいルールを確認します。意味が分かっていても、書き方で減点されたら悔やんでも悔やみきれません。
1. 「願はくは」の「はくは」はひらがなで書く
漢字で「願わくは」と書いたり、「願はくわ」としたりするのはNGです。歴史的仮名遣いを含めて「はくは」が正解です。
2. 「~んと欲す」の「んと」もひらがな
再読文字の「将(まさに~んとす)」と同じく、この部分は助動詞と助詞なのでひらがなにします。
実際の例文でシミュレーションしてみましょう。
| 原文 | 願王改之 |
|---|---|
| 思考プロセス | 「願」がある。主語は「王」ではなく、王に対する話し手の願いだ。 内容は「王がこれを改める」。 つまり「相手への要求」だから、文末は命令形だ! |
| 書き下し | 願はくは王之を改めよ。 |
| 現代語訳 | 王様、どうかこれを改めてください。 |
漢文の願望形まとめと学習のコツ

今回は漢文の「願望形」について、基礎から応用、そして記述対策まで徹底的に解説してきました。情報量が多かったと思いますので、最後に要点を表で振り返っておきましょう。
| 漢字 | 書き下し | 主な意味と識別のカギ |
|---|---|---|
| 願 | 願はくは | ①(自分)~したい(+ん) ②(相手)~してほしい(+せよ) ※「自分はン、相手はセヨ」で覚える! |
| 欲 | ~(せ)んと欲す | ①~したい(意志) ②今にも~しそうだ(将然) ※主語が人間か自然物かで判断! |
| 請 | 請ふ | ~させてください / ~してください ※英語のPlease/Let meのイメージ |
| 庶幾 | こひねがはくは | どうか~してください(切実) |
| 安得 | いづくんぞ~を得ん | なんとかして~したい(反語転用) ※「得られない」嘆きからの強い願望 |
漢文の学習は、ただ記号のように丸暗記するのではなく、その漢字が使われている「場面」や「筆者の気持ち」を想像することで、一気に理解が深まります。
「願」や「欲」という文字が出てきたら、読み飛ばさずに一度立ち止まって、「これは誰の、どんな願いなんだろう?」と考えてみてください。その「立ち止まって考える習慣」こそが、難関大合格への最短ルートになります。
ミチプラスでは、他にも漢文や古文の成績を伸ばすための具体的な勉強法を発信しています。ぜひ他の記事も参考にしながら、志望校合格に向けて頑張ってくださいね!









