古文の助動詞「なり」の見分け方を4ステップで解説!

古文の学習を進める中で、多くの人がつまずきやすい助動詞「なり」の見分け方。あなたも「参考書を何度も読んだのに、いざ問題を前にすると手が止まってしまう…」そんな経験はありませんか。
「なり」には複数の種類があり、それぞれの意味や複雑な活用表を覚えるのは大変だと感じる方は少なくありません。特に、用法が似ている断定や存在の見分け方、あるいは伝聞や推定の見分け方がどうしても腑に落ちない、というケースは後を絶ちません。
しかし、正しい手順とコツさえ掴めば、なりの識別は決して難しい文法事項ではありません。この記事では、なりの識別における4つの種類を誰にでも分かるように整理し、実際の大学入試問題レベルの識別も自信を持って解けるようになるためのポイントを、豊富な例文と共に徹底的に解説します。この記事を読み終える頃には、「なり」への苦手意識が、確かな得点源へと変わっているはずです。
ちなみに、現在の高等学校学習指導要領では、古典の読解を通して、日本の言語文化への理解を深め、思考力や判断力を養うことが重視されています。「なり」のような重要な助動詞の正確な理解は、そのための土台となる知識です。(出典:文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編」)
基本から学ぶ古文の助動詞「なり」の見分け方
最初に押さえるべき「なりの識別」4つの種類

古文の世界で「なり」という言葉に出会ったとき、それを正しく理解するためには、まず「なり」には大きく分けて4つの異なる顔がある、という事実をしっかりと認識することが全てのスタート地点です。これらをひとまとめに「なり」として捉えてしまうと、文脈を完全に見失い、文章全体の意味を取り違える大きな原因となってしまいます。
具体的には、文法的な機能を担う助動詞が2種類、そして言葉そのものの意味を表す用言(形容動詞・動詞)の一部として現れる「なり」が2種類あります。まずは、以下の全体像をまとめた一覧表で、それぞれの特徴を大まかに掴んでください。この4つの分類を常に意識することが、識別マスターへの最短ルートです。
分類 | 品詞 | 主な意味 | 見分けるヒント |
---|---|---|---|
助動詞 | 断定・存在の助動詞 | ~である、~にある | 名詞や活用語の連体形に接続する |
助動詞 | 伝聞・推定の助動詞 | ~そうだ、~ようだ | 原則として活用語の終止形に接続する(ラ変型には連体形に接続する) |
用言 | ナリ活用形容動詞の活用語尾 | (様子や状態を表す) | 「あはれなり」「静かなり」など、単語そのものの一部 |
用言 | ラ行四段活用動詞「成る」の連用形 | ~になる | 「~に なる」「~と なる」という形で状態変化を表す |
このように、同じ「なり」という響きでも、その文法的な役割や意味は全く異なります。文章中で「なり」を見つけたら、すぐに訳を考えるのではなく、「この4つのうち、どれに該当するだろうか?」と一歩立ち止まって考える習慣を身につけましょう。
4種類の「なり」が持つそれぞれの意味とは

4つの分類が頭に入ったところで、次にそれぞれの具体的な意味を深く掘り下げていきましょう。それぞれの「なり」が持つニュアンスを正確に理解することで、単なる丸暗記ではなく、文脈に沿った柔軟な判断が可能になります。
1. 断定の助動詞「なり」
これは最も使用頻度が高く、基本的な「なり」です。物事を「こうである」とはっきりと断定する際に使われ、現代語の「~だ」「~である」と訳すのが基本です。話し手の強い確信や、客観的な事実を示す場面で登場します。さらに、場所や位置を表す言葉に付く場合は、意味が少し変化し、「~にいる」「~にある」という存在を示す役割を担います。これは「~という場所に存在する」という意味合いから派生した用法です。
例文:
・月の都の人なり。(これは月の都の人間である。)
・春日なる三笠の山(大和国の春日にある三笠の山)
2. 伝聞・推定の助動詞「なり」
こちらは、話し手が直接見聞きしたことではなく、間接的な情報に基づいて何かを伝えるときに使われます。その情報の性質によって、二つの意味に分かれます。
- 伝聞(~そうだ、~という):人からの噂話や、又聞きした情報など、間接的に耳にした内容を表します。「~という話だ」というニュアンスです。
- 推定(~ようだ):物音や人々の声、楽器の音など、聴覚から得た情報を根拠に「~のようだ」と状況を推測する場面で使われます。「音あり」が語源とされており、聴覚との結びつきが非常に強いのが特徴です。
例文:
・奥山に猫またといふものありて、人をくらふなる。(山奥に猫またというものがいて、人を食うそうだ。)
・笛をいとをかしく吹き澄まして、過ぎぬなり。(笛をたいそう趣深く吹き鳴らして、通り過ぎていったようだ。)
3. ナリ活用形容動詞の活用語尾
これは助動詞と間違えやすいですが、独立した品詞ではなく、単語の一部分です。「静かなり(静かだ)」「あはれなり(しみじみと趣深い)」「おろそかなり(いい加減だ)」のように、物事の様子や状態、性質を表す形容動詞は、「~なり」という形で終わるものが多く、これをナリ活用と呼びます。そのため、この「なり」は活用語尾にあたります。
4. ラ行四段活用動詞「成る」の連用形
これも助動詞ではなく、現代語の「なる」とほぼ同じ意味を持つ動詞です。主に「AがBに成る」という形で、ある状態から別の状態へ変化することを表します。この動詞「成る」が、下に助詞「て」などが続く連用形になると「成り」の形になります。
例文:
・山路になりて、いと心細し。(山道になって、とても心細い。)
識別の基本となる4つの活用表

「なり」を正確に識別するためには、それぞれの活用表を頭に入れておくことが、文法問題への対応力を高める上で不可欠です。活用形は、下に続く言葉との関係性を明らかにし、文の構造を正確に読み解くための重要な手がかりとなります。特に、形の似ている断定の助動詞と形容動詞の活用は、違いを意識しながら注意深く覚えましょう。
知っておくと便利:活用の型について
断定の助動詞とナリ活用形容動詞は、活用音が「なら・なり(に)・なり・なる・なれ・なれ」と変化し、これはラ行変格活用動詞「あり」と似た変化のパターンです。そのため、文法書では「形容動詞型」または「ラ変型」と説明されます。このグループは活用が似ている、と覚えておくと整理しやすくなります。
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
なら | なり / に | なり | なる | なれ | なれ |
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
○ | なり | なり | なる | なれ | ○ |
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
静かなら | 静かなり / 静かに | 静かなり | 静かなる | 静かなれ | 静かなれ |
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
成ら | 成り | 成る | 成る | 成れ | 成れ |
「~である」と訳す断定・存在の見分け方

ここからは、特に受験生が混同しやすい助動詞「なり」の見分け方を、より実践的に掘り下げていきます。まずは、基本となる断定・存在の助動詞「なり」です。数ある「なり」の中からこれを見つけ出すための、最も確実な方法は何でしょうか。
結論から言うと、この「なり」を見分ける最大のポイントは「なり」の直前に置かれている言葉の品詞や活用形(=接続)です。このルールさえ押さえれば、識別は格段に楽になります。
断定・存在「なり」の絶対的接続ルール
直前が体言(名詞・代名詞)または活用する言葉の連体形に接続します。
現代語で考えてみても、「~だ」という言葉の前には「犬だ(名詞)」や「走るのだ(動詞の連体形)」のように、名詞か、名詞に準ずる形が来ますよね。古文もこれと全く同じ理屈です。ですから、例えば「花なり」であれば直前が名詞「花」なので断定、「するなり」であれば直前がサ変動詞「す」の連体形「する」なので断定、と機械的に判断することが可能です。
例文:
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。
→「する」はサ変動詞「す」の連体形です。したがって、この「なり」は断定の助動詞と判断し、「~するのである」と訳出します。
注意:「存在」の意味になる場合の見極め
前述の通り、「場所を表す名詞+なる」という形になっている場合は、単純な断定ではなく、「~にある」「~にいる」という存在の意味になる可能性が高いです。これは非常に重要なポイントで、入試でも頻繁に問われます。文脈から場所を示していると判断した場合は、訳し分けを忘れないようにしましょう。
例:駿河なる宇津の山(駿河の国にある宇津の山)
「~そうだ」と訳す伝聞・推定の見分け方

続いて、もう一つの重要な助動詞である伝聞・推定の「なり」の見分け方です。こちらも、識別の最大のカギは、断定の助動詞と同様に接続にあります。二つの助動詞の接続の違いを明確に区別することが、識別問題の正答率を上げることに直結します。
伝聞・推定「なり」の原則的接続ルール
原則として、直前が活用する言葉の終止形に接続します。
(ただし、ラ行変格活用(ラ変)の動詞や、ラ変型の活用をする助動詞などに付く場合は、例外的に連体形に接続します)
断定の「なり」が体言や連体形に接続したのに対し、こちらは終止形(言い切りの形)に接続するのが決定的な違いです。このルールを知っているだけで、多くの「なり」は瞬時に正しく識別できます。
例文:
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。
→「す」はサ変動詞「す」の終止形です。したがって、この「なる」は伝聞・推定の助動詞と判断し、「(男が書く)という日記」と訳出します。
「伝聞」と「推定」、どう使い分ける?
どちらの意味で訳すかは、文脈、特に情報の入手経路で判断します。基本は以下の通りです。
・人からの噂話や又聞きした話の文脈 → 伝聞(~そうだ、~という)
・物音や声、音楽などを直接聞いている文脈 → 推定(~ようだ、~らしい)
特に本文中に「音」「声」「鳴く」「響く」といった聴覚に関する単語があれば、それは推定である可能性が非常に高いという強力なヒントになります。
実践で解ける!古文の助動詞「なり」の見分け方
- 動詞や形容動詞を最初に見抜く
- 接続で判断する「なり」の識別方法
- 接続で判断できない場合のポイント
- 練習問題で理解度をチェック
- 迷わない古文の助動詞「なり」の見分け方手順
動詞や形容動詞を最初に見抜く

ここからは、テスト本番で「なり」を識別するための、より具体的で実践的な手順を解説していきます。闇雲に全ての可能性を考えるのではなく、最も分かりやすいものから消去法で考えていくのが、速く正確に解くための鉄則です。
識別プロセスの第一歩として、まずは助動詞かどうかをいきなり判断するのではなく、より判別が容易な動詞や形容動詞の可能性を先に検討し、除外してしまいましょう。
「なり」を見つけたら、まずこの2つのシンプルな質問を自分に投げかけてみてください!
質問①:「~に なる」や「~と なる」と現代語訳して自然か?
→ YESなら、それは状態変化を表すラ行四段動詞「成る」の連用形です。識別はここで終了です。特に「ず、と、に、く、う(ずっと肉う!)+なり」の後はほぼ動詞の「なり」になります。
質問②:「いと(とても)~なり」のように、程度を表す副詞を付けて意味が通じるか?
→ YESなら、それは様子や状態を表すナリ活用形容動詞の活用語尾です。これもここで識別完了です。
この2つの質問に当てはまらない場合、その「なり」は助動詞である可能性が極めて高くなります。この最初のステップを踏むだけで、4つの選択肢を一気に2つにまで絞り込むことができ、思考の負担を大幅に減らすことが可能です。
例えば、「静かなり」は「いと静かなり(とても静かだ)」と自然に訳せるので形容動詞。「大臣になり」は「大臣になる」という状態変化なので動詞、と素早く判断できます。
接続で判断する「なり」の識別方法

動詞と形容動詞の可能性を完全に除外できたら、いよいよ本丸である助動詞の識別に入ります。前述の通り、ここでの最大の武器であり、最も信頼できる判断基準は「接続」、つまり「なり」の直前の言葉の形です。
このルールは非常にシンプルかつ強力です。以下の対応関係を、呪文のように何度も唱えて完璧に暗記しましょう。
助動詞「なり」の接続による鉄則
- 直前が体言(名詞)や活用語の連体形 → 断定の助動詞「なり」
- 直前が活用語の終止形 → 伝聞・推定の助動詞「なり」
このルールは文法上の絶対的なものなので、一度覚えてしまえばどんな文章にも応用できます。例えば、動詞の活用をしっかりマスターしていれば、「するなり」と「すなり」というわずかな形の違いから、前者は連体形接続で断定、後者は終止形接続で伝聞・推定だと、迷うことなく即座に見抜くことができます。
ここからも分かるように、古文の読解において、動詞の活用や品詞分解といった基礎文法の習得が、いかに重要であるかが理解できるはずです。
接続で判断できない場合のポイント

「接続が最強のルールなのは分かったけれど、そのルールが使えない場合はどうすればいいの?」という鋭い疑問が当然出てくると思います。その通りで、いくつかの例外的な、あるいは判断に迷うパターンが存在し、それこそが応用問題として問われる部分です。
ここでは、接続という絶対的なルールだけでは判断が難しい場合の、決定打となる対処法を2つ紹介します。
1. 直前が四段活用など(終止・連体同形)の場合 → 文脈で判断する
四段活用動詞や、上一段・下一段活用動詞などは、終止形と連体形が全く同じ形をしています。例えば四段動詞「咲く」は終止形も連体形も「咲く」です。そのため、「咲くなり」という一文だけでは、接続のルールを適用して断定か伝聞・推定かを判断することができません。
このような場合は、最終手段として文脈に頼る必要があります。その文章がどのような状況を描写しているのかを読み解きましょう。
- 音や声が聞こえる文脈 → 推定(例:『源氏物語』「秋の野に人まつ虫の声すなり」→虫の「声」が聞こえるので推定)
- 人からの噂話の文脈 → 伝聞(例:『徒然草』「奥山に猫またといふものありて、人をくらふなる」→人から聞いた化け物の話なので伝聞)
- 自分の行動や目の前の確定的な事実 → 断定(例:『土佐日記』「女もしてみむとてするなり」→作者自身の行動なので断定)
特に「音・声」という単語は推定の確実なサインになることが多いので、見逃さないようにしましょう。
2. 直前が撥音便(ん)になっている場合 → 伝聞・推定で確定
古文では、発音のしやすさから特定の音が「ん」の音に変化する「撥音便」という現象が頻繁に起こります。そして、伝聞・推定の助動詞「なり」は、その直前の語にこの撥音便を引き起こす性質があります。
例えば、ラ変動詞「あり」に伝聞・推定の「なり」が付く場合、「あるなり」が撥音便化して「あんなり」となったり、さらに時代が下ると「ん」が表記されずに「あなり」と書かれることがあります。このような形を見たら、それは100%伝聞・推定の助動詞であると断定して問題ありません。
覚えておくべき撥音便無表記のパターン
「あなり」「かなり」「ざなり」「ななり」などを見たら、それは「あんなり」「かんなり」「ざんなり」「なんなり」と「ん」を補って読むのがルールです。これらは全て、ラ変型の活用語(あり、形容詞のカリ活用、打消のず、断定のなり)に伝聞・推定の「なり」が接続した形であり、識別の強力なヒントとなります。
3. 直前が形容詞(形容詞型)の場合 → 活用形で判断する
直前が形容詞(形容詞型)の場合、一見すると判断が難しそうですが、実はここにも明確な識別ルールが存在します。形容詞(形容詞型)には、通常の「本活用」と、助動詞などに接続するための特殊な「補助活用(カリ活用)」の2種類の活用があります。このどちらの連体形に接続しているかで見分けることが可能です。
形容詞(形容詞型)に接続する「なり」の識別ルール
- 本活用の連体形 (~き) + なり → 断定の助動詞
- 補助活用の連体形 (~かる) + なり → 伝聞・推定の助動詞
これは非常に重要なルールです。つまり、形容詞の活用形さえ分かっていれば、文脈に頼らずとも機械的に識別できるのです。
例文(断定):
この御前はのどけきなり。(こちらの御前は穏やかなのである。)
→「のどけき」は形容詞「のどけし」の本活用の連体形です。そのため、後ろの「なり」は断定と判断します。
例文(伝聞・推定):
いと罪重かるなり。(たいそう罪が重いということだ。)
→「重かる」は形容詞「重し」の補助活用の連体形です。したがって、後ろの「なり」は伝聞・推定と判断します。
注意:補助活用の撥音便
補助活用はラ変型と同じ活用をするため、伝聞・推定の「なり」に接続する際に撥音便を起こしやすい性質があります。例えば、「重かるなり」が「重かんなり」となり、さらに「ん」が無表記になって「重かなり」という形になることもあります。この「~かなり」の形も、伝聞・推定のサインとして覚えておきましょう。
練習問題で理解度をチェック

ここまでの知識を総動員して、実際の古典文学の文章で識別ができるか試してみましょう。以下の傍線部の「なり(なる)」は4種類のうちどれか、そして助動詞の場合はその意味も考えてみてください。(出典:国立国会図書館デジタルコレクション所蔵の各作品を参考に作成)
問題1:男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。(『土佐日記』)
問題2:山のたぎつ瀬音まさるなり。(『源氏物語』)
問題3:いとあはれなり。(『枕草子』)
問題4:十三になる年、のぼらむとて…(『更級日記』)
問題5:駿河の国にあなる山(『伊勢物語』)
【解答と解説】
解答1:
・すなる → 伝聞・推定の助動詞(伝聞)。直前の「す」がサ変動詞の終止形であるため。「男が書くという日記」と訳します。
・するなり → 断定の助動詞。直前の「する」がサ変動詞の連体形であるため。「(私が)書くのである」と訳します。
解答2:
・まさるなり → 推定の助動詞。直前の「まさる」は四段活用で終止・連体同形ですが、文中に「瀬音(川の流れる音)」という聴覚情報があるため、推定と判断。「急流の音が激しくなるようだ」と訳します。
解答3:
・あはれなり → ナリ活用形容動詞の活用語尾。直前に程度を表す副詞「いと」があり、「とても趣深い」と訳せるためです。
解答4:
・なる → ラ行四段動詞「成る」の連体形。「十三歳になる年」と、年齢が変化する意味なので動詞と判断します。
解答5:
・あなる → 伝聞・推定の助動詞(伝聞)。これは「あるなり」が撥音便化し、さらに「ん」が無表記になった「あんなり→あなり」の形です。これを見たら即座に伝聞・推定と判断できます。「駿河の国にあるという山」と訳します。
迷わない古文の助動詞「なり」の見分け方手順

最後に、これまで解説してきた全ての知識を、本番で迷わず使える最強の識別手順として再整理します。この思考フローを完全にマスターすれば、「なり」の識別はもはやあなたの苦手分野ではなく、得点を稼ぐ得意分野に変わるはずです。
「なり」識別の鉄則4ステップフロー
- 【STEP1】用言(動詞・形容動詞)の可能性を最初に消す
まず、「~に成る」と訳せる動詞か、「いと~」を付けて意味が通る形容動詞でないかを最優先で確認します。ここで当てはまれば、識別は完了です。 - 【STEP2】助動詞なら接続を最優先でチェック!
STEP1でなければ助動詞とほぼ確定。次に、識別の王道である接続を確認します。直前の語の活用形を正確に特定しましょう。
・体言・連体形に接続 → 断定と確定。
・終止形に接続 → 伝聞・推定と確定。 - 【STEP3】接続で不明なら文脈・音便を探す!
終止形と連体形が同じ活用語で判断できない場合に限り、次のカードを切ります。文中に「音」「声」などの聴覚情報がないか、あるいは「あなり」のような撥音便の形になっていないかを探します。これらは伝聞・推定の強力な証拠となります。 - 【STEP4】最後に訳して最終確認
導き出した結論に基づき、現代語訳を当てはめてみます。文全体の意味が自然でスムーズに通るかを確認し、最終的な答えを確定させましょう。
この手順に従って、上から順番に一つひとつ可能性を潰していけば、複雑に見える「なり」の識別も、まるでパズルを解くように論理的に正解を導き出すことができます。大切なのは、焦らず、この思考プロセスを何度も繰り返し練習して、無意識に使えるレベルまで自分のものにすることです。
- 古文の「なり」には助動詞2種、形容動詞、動詞の計4種類が存在する
- 識別の基本は「なり」の直前の語の形、つまり接続を丁寧に見ることである
- 最も効率的なのは消去法で、まず動詞や形容動詞の可能性から検討する
- 動詞の「なり」は「~になる」という状態変化で訳せるかどうかで判断する
- 形容動詞の「なり」は「いと」などの程度を表す副詞が付くかで判断する
- 助動詞の識別は接続のルールが絶対的なカギとなる
- 体言(名詞)や活用語の連体形に接続する「なり」は断定の助動詞である
- 断定の助動詞は現代語の「~である」と訳すのが基本
- 場所を表す語に付く断定の「なる」は「~にある」という存在の意味に変化する
- 活用語の終止形に接続する「なり」は伝聞・推定の助動詞である
- 伝聞・推定の助動詞は「~そうだ(伝聞)」や「~ようだ(推定)」と訳す
- 文中に「音」や「声」といった聴覚情報があれば推定の可能性が極めて高い
- 四段活用など終止形と連体形が同形の場合は接続で見分けられない
- その場合は文脈や撥音便の有無など他の要素で総合的に判断する必要がある
- 「あんなり」「あなり」のような撥音便の形を見つけたら伝聞・推定で即確定できる





