助動詞「めり」の意味と見分け方。「なり」との違いも解説

古典文法、特に助動詞の勉強はなかなか大変ですよね。私も教えていて、多くの生徒さんが助動詞の識別に苦労しているのを見てきました。中でも「めり」は、訳し方や意味が複数あったり、似たような助動詞「なり」や「らし」との違いが分かりにくかったりして、つまずきやすいポイントかなと思います。
「めり」の推定と婉曲ってどう使い分けるの?「なり」との決定的な違いは?活用や接続、それに「あめり」や「なめり」って何?そんな疑問で検索されたのかもしれませんね。でも、安心してください。「めり」は、その語源さえ知ってしまえば、驚くほどシンプルに理解できる助動詞なんです。
この記事では、助動詞「めり」の核心的な意味から、受験やテストで問われやすい「なり」や「らし」とのややこしい識別法まで、スッキリ整理して、深く掘り下げていきますね。
助動詞「めり」の基本(意味・訳し方・接続)

まずは、助動詞「めり」の基本スペックから確認していきましょう。意味や活用、接続といった、いわば「めり」のプロフィールですね。ここをしっかり押さえておくと、あとの比較がすごく楽になりますよ。一見地味ですが、土台がしっかりしていると応用が利きますからね。
「めり」の二つの意味(推定と婉曲)
「めり」には、大きく分けて二つの意味があります。学校の授業でも「推定・婉曲」とセットで習うことが多いですよね。
- 推定(~のように見える、~であるようだ)
- 婉曲(~であるようだ、~のように思われる)
どちらも現代語訳が「~ようだ」になることが多いので、これが学習者を悩ませる原因なんですね。「どっちも『ようだ』なら、どっちでもいいじゃん!」と思ってしまうかもしれませんが、文脈を正確に読み取るためには、この二つのニュアンスの違いを理解しておくことがとても重要です。
ポイントは「根拠がはっきりしているか」どうかです。この違いを意識するだけで、読解の精度がぐっと上がりますよ。
「推定」の訳し方と視覚的根拠

こちらが「めり」の中心的な意味であり、語源に最も忠実な使い方です。
「めり」が推定として使われる場合、話者は何かを目で見た状況(視覚的根拠)に基づいて、「~のように見える」と判断しています。
例えば、有名な『源氏物語』「若紫」の一節にこんなのがあります。
【用例】推定(視覚的根拠)
例:すだれ少し上げて、花奉るめり。
現代語訳:(光源氏が垣間見すると)すだれが少し上がっていて、その奥で(尼君が)仏に花を供えている様子が見える。
これは、光源氏が「花を供えている様子」を実際に目で見て、「あ、花を供えているようだ」と推定している場面です。垣間見(かいまみ)という、覗き見るシチュエーションですから、まさに「視覚」が根拠になっていますよね。
このように、視覚的な根拠がはっきりしている場合は「推定」と判断し、訳も「~のように見える」とすると、その情景がより鮮明に伝わります。
「婉曲」の訳し方と断定の回避
一方、「婉曲(えんきょく)」は、推定ほどのはっきりした視覚的根拠がない場合や、あえて断定的な表現を避けて、柔らかく表現するときに使われます。遠回しな言い方、ということですね。
【用例】婉曲(断定の回避)
例:法華堂などもいまだはべるめり。
現代語訳:法華堂などもまだ残っているようです。(あるいは「残っているように思われます」)
これは『徒然草』の一節ですが、筆者がその場で法華堂をじっと見て「残っているように見える」と推定しているというよりは、「(私の知識や見聞では)まだ残っているようです」と、断定を避けて柔らかく述べていると解釈できます。
平安時代の貴族社会では、物事をズバッと断定することを無粋(ぶすい)とする美意識があったとも言われており、こうした婉曲表現が好まれました。「めり」が持つ「推定(~ようだ)」というニュアンスが、ちょうどよく断定を和らげるクッションになったわけですね。
訳し方は「~であるようだ」「~のように思われる」あたりがしっくりきます。文脈上、明らかに目で見た情報じゃないな、と感じたら「婉曲かな?」と疑ってみるのが良いですね。
語源「見あり」で理解する「めり」

じゃあ、なぜ「めり」がこれほど「視覚」と深く関わるのか。それは語源を見れば一発で解決します。これ、私が古典文法を教えるときに一番強調するところです。
「めり」の語源は、「見(み)+あり」です。
動詞「見る」の連用形「見」に、ラ行変格活用動詞「あり」がくっついて、それが発音しやすく変化(音便化)しました。
「見あり」(mi-ari)→「めあり」(me-ari)→「めり」(meri)
つまり、「めり」はその成り立ち自体に「見る」という行為が組み込まれているんです。これを覚えておくだけで、「めり」のコアイメージは「視覚に基づく推定」だということが、もう忘れないですよね。
この語源は、単なる豆知識ではなく、後で出てくる推定の助動詞「なり」(聴覚)との決定的な違いを理解するための、最強の武器になりますから、ぜひ覚えておいてください。
「めり」の接続ルールとラ変型の例外
次に接続ルールです。これもテストや入試でよく問われるところですね。文法問題の定番です。
原則:活用語の終止形に接続します。
- 例:花奉る(四段・終止形)+めり
- 例:言ふ(四段・終止形)+めり
例外:ただし、直前の語がラ変型の活用の語である場合は、連体形に接続します。
- 例:ある(ラ変・連体形)+めり
- 例:白かる(形容詞・連体形)+めり
- 例:静かなる(形容動詞・連体形)+めり
「ラ変型」の仲間たちに注意!
ここで言う「ラ変型」とは、ラ変動詞(あり、をり、はべり等)だけを指すのではありません。接続のルール上、以下の活用語群のことを「ラ変型」と総称します。
- ラ変動詞(例:あり、をり)
- 形容詞(ク活用・シク活用)の補助活用(例:白し、楽し)
- 形容動詞(ナリ活用・タリ活用)(例:静かなり、堂々たり)
これらの語に「めり」が続くときは、例外的に「連体形」に接続する、と覚えておきましょう。
活用は「ラ変型(ら・り・り・る・れ・れ)」と同じですが、実際の古文では未然形や命令形が使われることは極めてまれで、ほとんどが終止形「めり」、連体形「める」、已然形「めれ」のどれかですね。参考までに活用表を載せておきます。
| 活用形 | 読み | 意味 | 接続 |
|---|---|---|---|
| 未然形 | (○) | ① 推定(~のように見える) ② 婉曲(~であるようだ) | 活用語の終止形 (ラ変型の語には連体形) |
| 連用形 | めり | ||
| 終止形 | めり | ||
| 連体形 | める | ||
| 已然形 | めれ | ||
| 命令形 | (○) |
注意すべき「あめり」と「なめり」
古文を読んでいると、「あめり」や「なめり」という形がよく出てきます。「これは『めり』と違う助動詞?」と混乱するかもしれませんが、これらは「めり」の仲間というか、変化した形(音便)です。
特に重要なのがこの二つです。
「あめり」= ある(ラ変・連体形)+ めり
「あるめり」→「あんめり」(んの音が入る:撥音便)→「あめり」(「ん」が表記されなくなった)
訳:「あるようだ」「いるようだ」
「なめり」= なる(断定「なり」・連体形)+ めり
「なるめり」→「なんめり」(撥音便)→「なめり」(「ん」が消えた)
訳:「~であるようだ」「~のようだ」
「あめり」や「なめり」を見たら、頭の中で「ある+めり」「なる+めり」と自動変換できるようにしておくと、読解がスムーズになります。
特に「なめり」は、「~である(断定)」+「~ようだ(推定)」という、結構強めの推測を表すときによく使われる頻出表現ですね。『宇治拾遺物語』の「盗人にはあらぬなめり。(盗人ではないようだ)」のように、「~ではないようだ」という文脈で非常によく登場します。
助動詞「めり」と「なり」「らし」の比較

お待たせしました。ここが一番の山場であり、一番お伝えしたいところです。助動詞「めり」と、他の推定・推量系の助動詞との違いですね。ここがクリアになれば、「めり」の理解は完璧と言ってもいいでしょう。特に「なり」との区別は重要です。
「めり」と推定「なり」の決定的な違い
生徒に教えていても、この「めり」と「なり」の違いが一番ごちゃごちゃになりやすいようです。どちらも接続が終止形接続(ラ変型除く)で、訳も「~ようだ」と似ているので、無理もないかもしれません。
結論から言うと、違いは「推定の根拠」です。それぞれの語源を思い出してください。
「めり」= 視覚 (語源:見あり)
目で見た情報に基づいて「~のように見える」と推定します。
「なり」= 聴覚 (語源:音(ね)あり)
耳で聞いた情報(物音、人の声、噂)に基づいて「~(の音)がするようだ」「~そうだ(伝聞)」と推定します。
「めりは目で、なりは耳で」と覚えておくとスッキリしますね。
「なり」は「音がする」が元の意味なので、そこから「物音がするようだ」という聴覚推定や、「人から聞いた(噂)」という伝聞の意味に発展しました。
例えば、「(馬のいななきや先払いの声が聞こえて)宰相の中将こそ、参りたまふなれ。(中将がいらっしゃるようだ)」という文なら、根拠が「音(聴覚)」なので「なり」が使われます。これを「めり」にするのは不自然、ということです。「姿が見えないけれど、音や声で判断している」のが「なり」の基本イメージですね。
「なり」はかなり意味の識別がややこしいので、こちらに基本から理解できるようにまとめています。お時間があるときにでも見てみてくださいね。

「めり」と「らし」の根拠の違い

「らし」も「~らしい」と訳すので似ていますが、根拠の質が全く違います。
- めり:直接的・感覚的な証拠(主に視覚)。話者が「今、見ている」ことが根拠。「あ、花を供えてる」→「花奉るめり」。
- らし:客観的・論理的な証拠。話者自身が直接見たわけではないが、何らかの状況証拠から論理的に「~に違いない」と推定する。
例えば、「(竜田川の水が真っ赤に染まっているのを見て)山の紅葉ぞ今は散るらし」という有名な歌があります。これは、「川の水が赤い」という客観的な状況証拠から、「(自分は山を直接見ていないけど、この赤い水はきっとそうだろう)山では今ごろ紅葉が散っているらしい」と論理的に推定しているので「らし」が使われます。
もし「めり」を使うなら、山を直接見て「あ、山が赤い。紅葉が散っているようだ」→「紅葉散るめり」となるはずです。この「直接的か、間接的(論理的)か」が大きな違いですね。
「めり」と「らむ」の視界の違い
最後に「らむ」との比較です。「らむ」は「(今ごろ)~ているだろう」と訳す「現在の推量」の助動詞ですね。この二つは「視界」というキーワードで区別できます。
- めり:視界内。話者が目で見ている範囲のことについて「~ようだ」と推定します。
- らむ:視界外。話者が目で見ていない範囲の現在の状況について「今ごろ~ているだろう」と想像します。
「めり」は、目の前の「花奉る」様子を見て使いました。一方「らむ」は、「(都にいる人が、遠く離れた旅先のあの人を思って)今ごろは、いづれの山か越ゆらむ。(今ごろ、どの山を越えているだろうか)」のように、目の前にないことを想像するのが「らむ」ですね。
「めり」は根拠(視覚)がある「推定」、「らむ」は根拠がなく想像する「推量」という点でも対照的です。
まとめ:助動詞「めり」の識別法

いろいろと解説してきましたが、助動詞「めり」を理解するカギは、やはり語源の「見あり」に尽きるかなと思います。
「めり」を見たら、「あ、これは『見る』がベースなんだな。視覚的な根拠があるのかな?それとも、そのニュアンスを使った婉曲かな?」と考えるクセをつけるのが一番の近道です。最後に、推定・推量系の助動詞の比較表をシンプルにまとめておきますね。頭の中を整理するのに使ってください。
| 助動詞 | 推定の根拠 (コアイメージ) | 訳し方 | 接続 |
|---|---|---|---|
| めり | 視覚(見あり) (話者の視界内) | ①~のように見える ②~(である)ようだ | 終止形 (ラ変型は連体形) |
| なり | 聴覚(音あり) (音・声・噂) | ①~(の音)がするようだ ②~そうだ(伝聞) | 終止形 (ラ変型は連体形) |
| らし | 客観的・状況証拠 (論理的) | ~らしい | 終止形 (ラ変型は連体形) |
| らむ | 根拠なし(視界外) (想像) | (今ごろ)~ているだろう | 終止形 (ラ変型は連体形) |
この表のイメージを頭に入れておけば、「めり」と他の助動詞との違いで迷うことは少なくなるはずです。古典文法の勉強は暗記も多くて大変ですが、こうした理屈(特に語源)とセットで覚えると忘れにくくなりますよ。応援しています!
古文の勉強、お疲れ様でした!
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