もう迷わない古文の用言識別!活用表と暗記すべき語で基礎から理解

「古文の用言の識別が苦手で、文章が読めない…」と悩んでいませんか。古文の読解において、動詞、形容詞、形容動詞といった用言の識別は、文章の意味を正確に捉えるための土台となります。特に、見た目が似ている「他の動詞の活用との紛らわしい語」を見分けることは、多くの受験生がつまずくポイントです。
この記事では、まず「暗記すべき語を把握する」ことから始め、基本となる「活用表」を丁寧に解説します。さらに、「音便は元の形に戻す」といった実践的なテクニックや、知っていると差がつく「語幹の用法」にも触れながら、古文の用言識別の全てを体系的に解説していきます。この記事を読めば、あなたの古文への苦手意識は、きっと得意意識に変わるはずです。
古文の用言識別!まず押さえるべき基本

用言識別の第一歩|まず暗記すべき動詞を把握する

古文の動詞を識別する上で、全ての動詞を丸暗記する必要はありません。最初に、不規則な活用をする動詞だけを覚えてしまうのが最も効率的な学習法です。なぜなら、古文の動詞の大部分は規則的な活用(四段、上一段、下一段、上二段、下二段)に分類されるため、例外を先に押さえることで、残りの大多数の動詞の識別が楽になるからです。
具体的には、以下の4種類の変格活用動詞を暗記しましょう。

これら合計10語の動詞は、数が少ない上に文章での出現頻度が非常に高いです。最初に覚えてしまうと、一気に読解がスムーズになりますよ。

なるほど!たった10語を覚えれば、残りは規則的な動詞だと考えられるのですね。それなら私にもできそうです!

変格活用は「カ・サ・ナ・ラない」で覚えるとよいですよ。ちなみにだんだん所属することばが増えていくのも覚えるポイントになります!
「カ(1)・サ(2)・ナ(3)・ラ(4)」
まずはこれらの動詞が出てきたら即座に反応できるよう、何度も声に出して覚えてみてください。この10語の暗記が、古文読解の最初の関門であり、最も重要な基礎となります。
【動詞の活用】9種類の活用表を総チェック

前述の通り、暗記すべき変格活用動詞を覚えたら、次は動詞全体の活用の種類を確認します。動詞の活用は、変格活用4種と正格(規則)活用5種の合計9種類です。
それぞれの活用形(未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形)が、後の助動詞との接続を判断する上で非常に重要になります。

活用表は古文文法の地図のようなものです。最初は全部覚えられなくても、何度も見返すことで自然と頭に入ってきますよ。
以下に9種類の動詞活用の活用表をまとめました。
活用名 | 活用の例 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
四段活用 | 書く | 書 | か | き | く | く | け | け |
上一段活用 | 着る | (着) | き | き | きる | きる | きれ | きよ |
上二段活用 | 起く | 起 | き | き | く | くる | くれ | きよ |
下一段活用 | 蹴る | (蹴) | け | け | ける | ける | けれ | けよ |
下二段活用 | 受く | 受 | け | け | く | くる | くれ | けよ |
カ行変格活用 | 来 | (来) | こ | き | く | くる | くれ | こ/こよ |
サ行変格活用 | す | (す) | せ | し | す | する | すれ | せよ |
ナ行変格活用 | 死ぬ | 死 | な | に | ぬ | ぬる | ぬれ | ね |
ラ行変格活用 | あり | あ | ら | り | り | る | れ | れ |
【形容詞の活用】ク活用・シク活用の活用表

形容詞は、物事の性質や状態を表す用言で、終止形が「し」で終わるのが特徴です。活用には「ク活用」と「シク活用」の2種類しかありません。
この2つの違いは、語幹の後に「し」がつくかどうかです。例えば、「白し」は語幹が「白」でク活用、「美し」は語幹が「美し」でシク活用、とはなりません。「美し」の語幹は「うつく」であり、それに「し」が接続しているシク活用となります。
見分け方は後ほど解説しますが、まずは活用表で全体の形を掴みましょう。形容詞には、動詞の活用に似た「本活用」と、助動詞に接続するための「補助活用(カリ活用)」の2つの活用があります。

うわー、形容詞にも活用が2種類もあるんですか…。覚えるのが大変そうだなぁ。

大丈夫ですよ、りょうた君。補助活用はラ変型の動詞と全く同じ活用をします。なので、ラ変を覚えていれば、実質新しい暗記は少ないんです。
ク活用(例:白し)
活用 | 本活用 | 補助活用 |
語幹 | 白 | |
未然形 | く | から |
連用形 | く | かり |
終止形 | し | 〇 |
連体形 | き | かる |
已然形 | けれ | 〇 |
命令形 | 〇 | かれ |
シク活用(例:美し)
活用 | 本活用 | 補助活用 |
語幹 | 美 | |
未然形 | しく | しから |
連用形 | しく | しかり |
終止形 | し | 〇 |
連体形 | しき | しかる |
已然形 | しけれ | 〇 |
命令形 | 〇 | しかれ |
【形容動詞の活用】ナリ活用・タリ活用の活用表

形容動詞は、物事の性質や状態を表す点で形容詞と似ていますが、終止形が「なり」または「たり」で終わるという違いがあります。活用もその終止形に応じて「ナリ活用」と「タリ活用」の2種類です。
ナリ活用は「静かなり(静かだ)」「あはれなり(しみじみと趣深い)」など数が多く、基本的な形容動詞です。一方、タリ活用は漢語に接続することが多く、「堂々たり(堂々としている)」のように使われ、数は限られます。
形容動詞の活用は、ラ変型の動詞によく似ているため、関連付けて覚えると効率的です。
ナリ活用(例:静かなり)
活用形 | 本活用 | 補助活用 |
語幹 | 静か | |
未然形 | なら | |
連用形 | に | なり |
終止形 | なり | |
連体形 | なる | |
已然形 | なれ | |
命令形 | なれ |
タリ活用(例:堂々たり)
活用形 | 本活用 | 補助活用 |
語幹 | 堂々 | |
未然形 | たら | |
連用形 | と | たり |
終止形 | たり | |
連体形 | たる | |
已然形 | たれ | |
命令形 | たれ |

形容詞の補助活用も、形容動詞も、ラ変動詞の活用に似ているんですね!関連付けると覚えやすそうです。
識別に迷ったら活用表に戻るのが上達の近道

用言の識別でつまずいた時、最も確実な解決策は活用表に立ち返ることです。
古文の読解は、単語や文法の知識を組み合わせるパズルのようなものです。活用表はそのパズルの設計図にあたります。面倒に感じるかもしれませんが、識別に迷うたびに活用表を確認する癖をつけることで、文法規則が体に染み付いていきます。
逆に、あやふやな知識のまま感覚で読み進めてしまうと、いつまでも正確な読解はできません。特に、大学入試では文法的な根拠に基づいた解答が求められます。

急がば回れ、ですね。一つ一つの用言を丁寧に確認する作業が、最終的には合格への一番の近道になります。諦めずに頑張りましょう。
古文の用言識別で迷わない!実践的なコツ

【動詞の識別】助動詞「ず」をつけるだけの簡単ステップ

変格活用以外の動詞(規則活用の動詞)の活用種類を識別するには、非常に簡単な方法があります。それは、動詞の後に打消の助動詞「ず」をつけてみることです。「ず」をつけたときの直前の音(母音)によって、活用の種類をほぼ特定できます。
- 直前がア段の音(-a)になる → 四段活用
- 例:「書く」→ 書か(kaka)+ず
- 直前がイ段の音(-i)になる → 上一段活用 or 上二段活用
- 例:「着る」→ 着(ki)+ず (上一段)
- 例:「起く」→ 起き(oki)+ず (上二段)
- 直前がエ段の音(-e)になる → 下一段活用 or 下二段活用
- 例:「蹴る」→ 蹴(ke)+ず (下一段)
- 例:「受く」→ 受け(uke)+ず (下二段)

えっ、これだけでいいんですか?すごく簡単ですね!でも、イ段やエ段のとき、上一段と上二段、下一段と下二段の区別はどうするんですか?

良い質問です。上一段活用は数が非常に少なく、『見る』『着る』『似る』『煮る』『射る』『鋳る』『干る』『乾る』『居る』『率る』の上一段10語と、『蹴る』の下一段1語だけです。この11語を覚えてしまえば、残りは全て上二段活用か下二段活用と判断できます。
この方法を使えば、暗記の量を最小限に抑えつつ、ほとんどの動詞を正確に識別できるようになります。
【形容詞の識別】動詞「なる」をつけて意味を確認

形容詞のク活用とシク活用の識別も、簡単な方法で判断できます。それは、形容詞の連用形に動詞「なる」をつけてみることです。
- 「〜く なる」で意味が通じる → ク活用
- 例:「白し」→「白くなる」
- 「〜しく なる」で意味が通じる → シク活用
- 例:「美し」→「美しくなる」
ほとんどの形容詞はこの方法で識別が可能です。例えば、「楽し」という形容詞の場合、「楽しくなる」とは言いますが、「楽くなる」とは言いません。したがって、「楽し」はシク活用であると判断できます。
ただし、この方法はあくまで簡易的な識別法であり、100%ではありません。最終的には、辞書で確認するのが最も確実ですが、初学者のうちはこの「なる」をつける方法が非常に有効な手段となります。
【形容動詞の識別】消去法でシンプルに判断

形容動詞の識別は、これまで解説してきた動詞・形容詞の識別方法を使えば、非常にシンプルになります。結論から言うと、動詞でも形容詞でもない用言が、形容動詞であると判断する「消去法」が最も効率的です。
具体的な手順は以下の通りです。
- ステップ1:動詞かどうかを判断
- まず、変格活用動詞(カ変、サ変、ナ変、ラ変)の10語でないか確認します。
- 次に、助動詞「ず」をつけてみて、ア・イ・エ段の音に変化するかどうかで規則活用の動詞でないか確認します。
- ステップ2:形容詞かどうかを判断
- 動詞でないと判断されたら、次に終止形が「し」で終わるか確認します。
- 「〜くなる」「〜しくなる」で意味が通じるかどうかも判断材料になります。
- ステップ3:形容動詞と判断
- ステップ1と2のどちらにも当てはまらない用言であれば、それは形容動詞である可能性が非常に高いです。最後に、終止形が「なり」または「たり」になるか確認して確定させます。
この消去法を用いることで、複雑に見える用言の識別を、機械的なステップに落とし込んで考えることができます。
識別の精度を上げる「音便」の復元ルール

音便(おんびん)とは、単語の中の発音が、言いやすいように変化する現象のことです。古文では特に、活用語の連用形によく見られます。音便が起きていると、元の用言(動詞・形容詞・形容動詞)の形が分かりにくくなり、識別の妨げになることがあります。
したがって、音便が起きていたら、まず元の形に復元する癖をつけることが重要です。
主な音便は以下の4種類です。
種類 | 変化のパターン | 例 |
イ音便 | 「ぎ」「し」「き」 → 「い」 | 書きて → 書いて |
ウ音便 | 「ひ」「び」「み」「く」 → 「う」 | 思ひて → 思うて |
促音便 | 「り」「ひ」「ち」 → 「っ」 | 立ちて → 立って |
撥音便 | 「み」「に」 「び」「る」→ 「ん」 | 飛びて → 飛んで ※前が音便化したことで「て」も濁っていて「で」になる |

『思うて』と出てきたら、元の形は『思ひて』で、動詞はハ行四段活用の『思ふ』の連用形だな、と考えるわけですね!

その通りです!音便を制する者は、活用の識別を制します。特に和歌や会話文で多用されるので、しっかりマスターしておきましょう。
知っていると差がつく「語幹」の特殊な用法

語幹とは、活用しても変化しない部分のことです。通常、語幹だけで使われることは少ないですが、古文特有の表現として、語幹だけで意味を持つ用法が存在します。これを知っていると、他の受験生と差をつけることができます。
代表的なのは、感動や呼びかけを表す用法です。
- 「あな、〜や」の形で使われる場合
- 「あな」は感動詞で、「ああ、〜だなあ」という意味を表します。この「〜」の部分に、形容詞や形容動詞の語幹が入ることがあります。
- 例:「あな、うつくしや」(ああ、かわいらしいことよ)
- 「うつくし」は形容詞「うつくし」の語幹です。シク活用は語幹の時は終止形
- 例:「あな、静かや」(ああ、静かなことよ)
- 「静か」は形容動詞「静かなり」の語幹です。
文章中で突然体言止めのように語幹が現れたら、この用法を疑ってみましょう。文全体の意味が取りやすくなるだけでなく、文法問題で問われる可能性もある重要な知識です。
最重要!紛らわしい語の識別方法【一覧表】

これまでに解説した識別ルールを使えば、ほとんどの用言は見分けられるようになります。しかし、古文には、形だけを見ると活用の種類を間違えやすい、受験生泣かせの紛らわしい動詞が存在します。
結論として、これらの特定の動詞は理屈で考えるよりも、知識として暗記してしまう方が、識別のスピードと正確性が格段に向上します。なぜなら、入試ではこうした紛らわしい動詞が意図的に狙われることが多く、知っているかどうかが直接得点に結びつくからです。

確かに!『借る』とか『足る』とか、終止形が『る』で終わるから、下一段活用かと思っちゃいそうです…。

良いところに気がつきましたね、りょうた君。まさにその通りです。形に惑わされないように、これから紹介する動詞はセットで覚えてしまうのが得策ですよ。
ここでは、特に間違いやすい四段・上二段・下二段活用の動詞を一覧表にまとめました。
活用の種類 | 紛らわしい動詞の例 | 識別のポイント・注意点 |
---|---|---|
四段活用 | 飽く、借る、足る、来たる | 終止形が「る」で終わるため、他の活用と間違いやすい代表格です。「ず」をつけると「借ら(-a)ず」「足ら(-a)ず」とア段の音になることを必ず確認しましょう。 |
上二段活用 | 恨む、恋ふ、老ゆ、悔ゆ | これらは現代語の感覚で考えると五段活用(古文の四段活用)と混同しがちです。「ず」をつけると「恨み(-i)ず」「恋ひ(-i)ず」とイ段の音になる上二段活用と覚えましょう。 |
下二段活用 | 得(う)、寝(ぬ)、経(ふ) 植う、飢う、据う | 「得」「寝」「経」は1文字の動詞で、活用がイメージしにくいため注意が必要です。また、「植う」なども「ず」をつけると「植ゑ(-e)ず」となるワ行になることを意識してください。 |

なるほど…。ルールだけでなく、例外的な知識としてこれらの動詞をインプットしておくことが大切なのですね。

その通りです。特にこの表にある動詞は、頻出でありながら差がつきやすいポイントです。何度も声に出して、リズムで覚えてしまうのがおすすめですよ。
【総括】古文の用言識別をマスターするための要点
- 用言の識別は、古文を正確に読解するための土台である
- まずは不規則な活用をする変格活用動詞10語を暗記する
- 動詞の活用は、正格活用5種と変格活用4種の合計9種類
- 形容詞にはク活用・シク活用の2種があり、それぞれに本活用と補助活用がある
- 形容動詞にはナリ活用とタリ活用の2種類が存在する
- 識別に迷ったときは、基本である活用表に必ず立ち返る
- 規則動詞の活用は、直後に「ず」をつけ、その前の母音で判断する
- 上一段・下一段動詞は数が少ないため、先に覚えてしまうのが効率的
- 形容詞のク・シクの区別は、連用形に「なる」をつけ意味が通じるかで判断
- 形容動詞は、動詞でも形容詞でもないものを消去法で識別する
- 音便が使われている語は、元の形に復元してから活用を考える
- 形容詞などの語幹が「あな、〜や」の形で感動・詠嘆を表すことがある
- 「借る」「足る」など、終止形が「る」でも四段活用の動詞がある
- 「恨む」「恋ふ」などは、現代語の感覚と異なる上二段活用と覚える
- 地道な文法ルールの理解と暗記が、読解力向上の最短ルートである





