【徹底解説】令和7年度共通テスト国語<古文>


共通テスト終わったみたいだけど難しかったのかなぁ。

うん。今年の受験生は大変だったと思うよ。特に令和7年度は新課程の初年度になるし。

そうだよねぇ。解答する時間も80分から90分に増えたようだし、大変だったよね。

そうですね。今回の共通テストは大きく変化しました。それでは、今日は古文について解説をしていきましょうか。
令和7年度共通テスト古文は鎌倉時代の物語『在明の別れ』と『源氏物語』若菜の下の巻の複数文でした。設問数は問1~問3という大幅減少かつ、選択肢が5つから4つという形に大きく変化しました。やはり、新形式問題の実用的文章に合わせてこの辺りも変更してきたものと思われます。それでは各問を見ていきましょう。
以下の解説を見る際は、問題を印刷するか、別の画面で見ると分かりやすくなりますよ。
問1は例年通りの解釈問題
ア「いはけなくより」
- かわいらしいので
- 幼いころから 〇
- 言い表せないほど
- 他の子よりも
問1のような解釈問題を考える手順は次のようにしていきます。ここから説明する中で間違えのポイントは青のラインを引きますね。
- 品詞分解をする
- 辞書的な意味を踏まえた直訳する
- 文脈に合わせて文意や単語の訳を調整する
- SVOCや5W1H、指示語の内容など補足できるものは全てする
今回の「いはけなくより」を品詞分解すると以下のようになります。
「いはけなく|より」
まずは単語の辞書的な意味を整理してみましょう。
「いはけなし」(形容詞)
- 幼い
- あどけない
- こどもっぽい
「より」(格助詞)
- ~から
- ~より
- ~のために
- ~で
- ~するとすぐに
単語の意味を整理した時点で辞書的な意味で外れる選択肢の③と④の間違いであることに気付きます。選択肢①「幼いからかわいい」という意味も「いはけなし」から一見考えることができそうです。しかし、傍線部の周辺は父親である「右の大臣」にとって、娘の「大君」が病に倒れ、命が危うくなっている場面です。「右の大臣」は手を擦り合わせ、仏にお願い申し上げるように話す中に今回の傍線部があります。
「あまたはべる中に、何の契りにか、いはけなくよりたぐひなく思ひそめはべりにし闇を、さらに晴るけはべらぬ」
傍線部直後に「たぐひなく思ひそめはべりにし(比べるものがなく思い始めていまし~)」とあることから①の「かわいらしいので」では、やはり状況に合わなくなります。よって②が正解です。
イ「なかなか」
- かえって 〇
- ひたすら
- たちまち
- 一斉に
「なかなか」は一語の副詞です。形容動詞「なかなかなり」の別表記として「なかなか」もありますが、意味はだいたい似ています。
「なかなか」(副詞)
- かえって
- むしろ
- なまじっか
- 中途半端に
ここは素直に①の「かえって」が文脈に合うか確かめてみます。
「~いささか直りて、目をわづかに見開けたまへり。あるかぎり、なかなか手まどひをして、『誦経よ、何よ』とまどひたまふに…」
この場面は、病のため今にも死にそうな「大君」の目がうっすら開いた場面です。そこにいる人は皆、あまりの出来事にかえって慌てふためくようになってしまったと考えることができます。よって正解は①になります。
ウ「呼ばひののしる」
- 近づきながら悪口を言う
- 泣きながら恋い慕う
- 大声を出して叫び続ける 〇
- 名前を呼んで祈祷する
これを品詞分解すると以下の通りです。
呼ばひ|ののしる
「呼ばふ」(動詞)
- 何度も呼ぶ
- 呼び続ける
- 求愛する
「ののしる」(動詞)
- 大声で騒ぐ
- 評判が立つ
- 権勢が盛んだ
- 声高く鳴く
- わめく
今回の場面は「もののけ」と呼ばれる存在が、病人である「大君」から童(小さな子ども)にのり移らされて、「大君」が目覚める場面です。きっと「大君」の周りにいた人が話しかけたのでしょう。

もののけとは【物の怪】と書きます。人に取り憑いて、病気や不幸をもたらすものを指したり、また、これらが人に取り憑くこと自体を指すことがあります。古文の世界では病気になるともののけが取りついたと考え、それをおはらいするために祈祷をしていたのですよ。
①は「近づく」も「悪口」もどちらも単語の持つ辞書的意味からは外れます。④は「祈祷する」が辞書的に意味にはありません。残った②と③ですが、②の「泣きながら」は場面的に合いそうですが、辞書的な意味に合いません。よって正解は③となります。
問2は敬語の識別
ここ数年敬語の問題が頻出しているので、今一度敬語の解き方を整理しておきましょう。
敬語の要点は敬意の方向を指す以下の2つです。
- 誰からの敬意か
- 誰への敬意か
①「誰からの敬意か」について
「誰からの敬意か」はその敬語があるところで判断します。
地の文…作者や語り手からの敬意
(文章や語り物で会話や歌を除いた叙述の部分の文章)です。要するに「」がついていない部分と思ってください。)
会話文…その会話を話している人からの敬意
(「」がついている文)
案外簡単にわかりますので、敬語の理解はまずはこの「誰からの敬意」から考えるのがおすすめです。
②「誰への敬意」について
これを識別するためには、敬語自体が尊敬語か、謙譲語か、丁寧語かを考える必要があります。
- 尊敬語…その動作をする人への敬意
- 謙譲語…その動作をされる人への敬意
- 丁寧語…その文章を読む人やその話を聞いている人への敬意
このように考える必要があります。敬語は、その単語がどの敬語の種類に該当するかを考える必要があります。そして、敬語の問題を考えるときには、「誰から、誰へ」の敬意に該当するかをよく確かめる必要があります。
それでは選択肢の検討です。
①a書き手(作者)から山の座主への敬意を示す尊敬語である。
b山の座主から右大臣への敬意を示す丁寧語である
c人々から大君への敬意を示す尊敬語である
②a書き手(作者)から山の座主への敬意を示す尊敬語である。
b山の座主から右大臣への敬意を示す尊敬語である
c書き手(作者)から大君への敬意を示す謙譲語である 〇
③a書き手(作者)から山の座主への敬意を示す尊敬語である。
b山の座主から右大臣への敬意を示す丁寧語である
c書き手(作者)から大君への敬意を示す謙譲語である
④a書き手(作者)から左大臣への敬意を示す尊敬語である。
b山の座主から右大臣への敬意を示す丁寧語である
c書き手(作者)から大君への敬意を示す謙譲語である
⑤a書き手(作者)から左大臣への敬意を示す尊敬語である。
b山の座主から大君への敬意を示す尊敬語である
c人々から大君への敬意を示す尊敬語である
それでは一つずつ見ていきましょう。
a ~泣きまどひたまふに、いと静かに数珠押し揉みたまひて、『令百由旬内、無諸衰患』とよみたまへる御声、はるかに澄みのぼる心地する~
まずは「」がついていないので、地の文であり、書き手(作者)からの敬意だということは判別できます。また、この場面では、病気が良くなることを願って僧である「山の座主」が祈祷をしています。当然お経を読んでいるのも「山の座主」です。傍線が引かれている「たまふ」は次のように考えます。
〇たまふ(四段活用)…尊敬語
本来の意味「お与えになる」
補助する意味「~なさる・お~になる」
〇たまふ(下二段活用)…謙譲語
補助する意味「~させていただく・~ております」
敬語は、本来の単語の訳と、前の単語の訳を補助するものがあります。以下の例のようにまずは直前に用言(動詞・形容詞・形容動詞)があるかどうかで考えると良いですよ。
書をたまふ…書物をお与えになる
書を読みたまふ…書物を読みなさる
今回は「たまへ」の直前に「よみ」という動詞があることから前の意味を補助する意味になります。また「たまへ」の後に「る」があります。古文で出てくる助動詞の「る」は直前の音がア段音なら「受身・尊敬・自発・尊敬」の意味を持つ助動詞「る」、エ段音なら「完了・存続」の意味を持つ助動詞「り」と考えることができます。
ア+「る」…(例)読まる。 「る」は「受身・尊敬・自発・尊敬」の助動詞「る」終止形
エ+「る」…(例)読めるとき 「る」は「完了・存続」の助動詞「り」の連体形
今回は「る」の直前が「たまへ」というエ段音のため、助動詞「り」ということが確定します。この助動詞「り」は四段活用の已然形(命令形)かサ行変格活用の未然形に接続します。「たまへ」は「たまふ」を四段活用にすると已然形(命令形)にあたりますので、aは「よむ」という動作をした山の座主への敬意を表した尊敬語であることが分かります。この時点でこれに外れる選択肢の④と⑤が間違いなのが分かります。
b「今はけしうおはせじ」
aの識別ができていれば簡単だったかと思います。「おはす」の意味の詳細は下記を見てください。
おはす(尊敬語)
①いらっしゃる。おいでになる。おありになる。▽「あり」の尊敬語。
「竹の中におはするにて知りぬ」
[訳] 竹の中にいらっしゃることでわかった。
②いらっしゃる。おいでになる。お越しになる。▽「行く」「来」の尊敬語。
「まだ暁におはす」
[訳] まだ夜が明けないうちにお出かけになる。
〇補助動詞(補助する意味)
〔用言の連用形、断定の助動詞「なり」の連用形「に」、またそれらに助詞「て」が付いた形に付いて〕…て(で)いらっしゃる。…て(で)おいでになる。▽尊敬の意
さて、この訳と敬語の種類から考えると、残った選択肢の中で②のみ尊敬語です。ちなみに今回は直前に用言があるので補助動詞の用法になります。よって、この時点で解答は②であることがわかります。
c「人々のまもりきこゆるを」
cはbで解答が出ていれば考える必要はありません。ただしbが分からなければ、次のように考えます。
「きこゆ」(謙譲語)
本来の意味「申し上げる」
補助動詞(補助する意味)「~申し上げる・お~する」
この場合、「きこゆる」の直前に「まもり(見つめる)」という動詞があるので謙譲語の補助する働きであることが分かります。謙譲語は動作をされる人(受け手)への敬意になりますので、人々が回復を願い見つめ申し上げる人「大君」への敬意となります。

敬語の問題は慣れるまでは大変ですが、覚える単語数も少ないし、今回も共通テストに出ました。非常にコスパが良いのでぜひ身につけてください!
問3は文章Ⅰと文章Ⅱを読んで生徒が話し合いをする授業の様子
この生徒の話し合いの中に空欄があり、その空欄に話し合いの内容を踏まえて解答する必要があります。それでは、さっそく解説をしていきます。
空欄Xの直前では、文章Ⅰと文章Ⅱで、病を「小さき童」に移して治すという共通点があることを述べた後、文章Ⅰと文章Ⅱの相違点が話題になっています。そして、文章Ⅱでは「小さき童」に病を移された「もののけ」が言った内容が空欄Xに入ります。
さて「もののけ」の会話の内容をざっくり全訳してみます。
他の人は皆去りなさい。院(光源氏)お一人のお耳に申し上げたい。自分をこの数か月も調伏し困らせなさるのが薄情で辛いので、同じことならお知らせしようと思ったが、そうは言っても(院の)命が耐えられないほど、身をくだいて悲嘆に暮れていらっしゃるご様子を拝見すると、今でこそ、このようなひどい姿に変わっているが、昔の心(愛情)が残っていればこそ、このように参上したので、お気の毒な様子を見過ごすことができなくて、とうとう現れ出てしまったのです。決して知られまいと思っていたのに。
このように「もののけ」は述べています。
(ⅰ)の選択肢を見てみましょう
- まわりの者がみな自分を恐れて去ってしまったので、せめて光源氏には反省している気持ちを分かってもらいたくてこうして姿を現したのだ
- 妻のために自分に謝ろうとする光源氏を憎らしく思うのに、それでも光源氏への愛情は昔のままであることを知らせたくてここに来てしまった
- 光源氏の妻がこのまま死んでしまいそうなほど苦しんでいる様子を間近で見たいので、長年続く恨みの心を持ったままここにやって来たのだ
- 自分がもののけとなって取りついていることは知られたくなかったのに、光源氏のいたわしい姿を見過ごすことができずに姿を現してしまった 〇
はい、上の訳の内容を示すのは④になりますね。ただ、この訳のように全部解釈するのが難しかった人も、会話の最後の部分にはこのような表現があります。
「さらに知られじと思ひつるものを」
そしてこの部分を品詞分解すると以下のようになります。
「さらに|知ら|れ|じ|と|思ひ|つる|ものを」
ここでは「さらに~じ(打消)」という形の定型句があります。
おほかた
つゆ
さらに + 打消
かけて
たへて
全く(少しも)~打消(ない 等)
上の意味からも分かるように「全く~ないつもりだ・少しも~ないつもりだ」という全否定を示すものです。「れ」は受身の助動詞の未然形。「じ」は打消の意志の助動詞の終止形。「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形。最後の「ものを」は接続助詞の詠嘆用法です。この部分だけ解釈すると「まったく知られるつもりがなかったのに」という口語訳になりますので、知られるつもりがなかった内容を考えて答えることができます。
(ⅱ)の設問の空欄Yは文章Ⅰ中の和歌を話題にしている
それでは和歌の前後を文章を見てみましょう。
いとにほひやかにけ近きものから、妬げなるまみのけしき、左の大臣はさやうにも分きたまはず、父殿ぞ、いとあやしう、『思ひかけぬ人にも似たまへるかな』と心得ず思さるるに、うちみじろきて、さまざまに朝夕こがす胸のうちをいづれのかたにしばし晴るけむとのたまふけはひ、いささかその人にもあらず…
この場面は目を覚ました「大君」の様子がおかしいことを夫の左大臣は気づかず、父である右大臣が気づいていくという流れになっています。
そして肝心の和歌の直訳は「あれこれと朝夕と思い悩む胸の内を、どこへやればしばらくの間、気持ちが晴れたのでしょうか」あたりになるかと思います。こうした和歌を詠むのは「大君」ではなく、苦悩する「もののけ」なります。
リード文で右大臣の妹の女君は左大臣(大君の夫)との関係が途絶え、苦悩しているという情報があります。この情報を踏まえると「もののけ=女君」になることがわかります。
以上を踏まえて選択肢を見てみましょう。
- もののけの和歌で、退治されるの無念を詠んでいて、これ以上の祈祷はやめるよう頼んでいる
- もののけの和歌で、激しい嫉妬によるつらさを詠んでいて、それをぶつける先を求めている 〇
- 大君の和歌で、左大臣への愛情を詠んでいて、その思いをもののけに分からせようとしている
- 大君の和歌で、熱にうなされる苦痛を詠んでいて、その原因が明らかになることを望んでいる
選択肢の③④は主語を大君にしているので間違い。①②の選択ですが、直訳から考えても①の退治される無念と、祈祷を止めるようにな意味は読み取れない。よって②が正解。
(ⅲ)の設問については先ほどの(ⅱ)と一緒に考える
- 大君の顔つきが穏やかになって、右大臣は大君が一命をとりとめたと思っているけれど、左大臣はもののけがまだ取りついていることに気付いていますね。大君はもののけから解放されず、死を覚悟して出家を決意しています
- 大君の顔つきが苦しみに満ちたものになって、これほどまでに大君を憎むのは女気味の仕業だと左大臣は気づいてますね。大君はもののけから解放されずに亡くなってしまい、右大臣は着物を引き被って悲しみにくれています
- 大君の顔つきが他の人に重なって見えて、右大臣と左大臣はそれが誰なのか怪しんでいるけれど、女君だとは気づいていないですね。大君はもののけから解放されて我に返り、苦しむ姿を皆に見られたくなかったと思っています
- 大君の顔つきがまるで別人のようになって、左大臣は気づいていないけれど、右大臣はその様子がまさしく女君のものだと気づいていますね。大君はもののけから解放された後、正気を取り戻して気恥ずかしそうにしています 〇
それでは、①から検討していきます。①は「右大臣(父)」と「左大臣(夫)」の立場が逆になっていますね。また、後半の死を覚悟して出家を決意しているも文脈にあいません。②は①に引き続き「右大臣(父)」と「左大臣(夫)」を逆にしています。さらに着物を引き被っているのが右大臣という内容もふさわしくありません。③は「右大臣(父)」は気づいているけれど「左大臣(夫)」は気づいていないという文脈から考えて不適です。残った④が正解となります。
以上古文の解説になります。

古文の勉強は覚えることが多くて大変なように思えますが、やるべきことをきちんと身につけていけば必ず成長していきます。ぜひ勉強を続けていってください。

たく先生、ありがとうございます! 何となくわかりました!

もう、何となくじゃなくて、きちんと覚えなきゃだめだよ。古文は基礎知識が大切だって解説に言われていたじゃない!

そうだよね。僕も助動詞や敬語をしっかり勉強して、共通テスト対策をしていくぞ! がんばるぞ!!

おー!

共通テスト対策は基礎基本を固めることが大切です。同時に過去問演習をお勧めします。赤本など解説が読みやすいなどを決めてしっかり取り組んでみてください。

古文の基礎をしっかり固めたいならこちらがおすすめ。富井先生の説明はとても分かりやすくておすすめですよ。