古文読解が劇的にわかる!平安時代の官職と位階をわかりやすく解説


「先生、古文を読んでいて『大納言』とか『少将』とか出てくると、誰が一番偉いのか全然わかりません……。『中務省』とか漢字ばかりで頭が痛くなりそうです……」

「たしかに、現代にはない仕組みだから最初は戸惑うよね。でも、平安時代の『官職(おしごと)』と『位階(ランク)』の基本ルールを押さえるだけで、登場人物の力関係が手に取るようにわかって、古文が一気に面白くなるんだよ!」
高校生必見!古文の土台となる平安時代の官職・位階の基礎知識
そもそも「官職」と「位階」の違いとは?

古文を読んでいると、「左大臣」や「正二位」といった言葉が頻繁に登場します。これらを正確に理解するためには、まず「官職(かんしょく)」と「位階(いかい)」の違いをはっきりと区別しておく必要があります。
現代の会社に置き換えてみると非常にわかりやすいですよ。『位階』とは、その人の身分やランクを示すものです。会社で言えば、「正社員」「課長クラス」「役員クラス」といった身分そのもののことですね。正一位(しょういちい)から少初位下(しょうそいのげ)まで、細かく30段階に分けられていました。数字が小さいほど、また「正」が含まれている方が、「従」が含まれているよりも偉いと覚えておきましょう。

「なるほど、位階は『自分自身のステータスやレベル』みたいなものですね。じゃあ官職って何ですか?」
一方の『官職』とは、実際に担当する仕事の役職のことです。現代の「営業部長」や「人事課長」のように、国政の中で任された具体的な仕事のポジションを指します。「左大臣」や「大納言」などはこれに当たります。平安時代の律令制では、あらかじめ「この官職には、この位階の人が就く」という基準(官位相当制)が厳密に定められていました。(出典:国立国会図書館 リサーチ・ナビ『官職・位階を調べる』)
古文の中で、ある人物の身分が高く描かれているのか、それとも低い立場にいるのかを把握することは、物語の背景や人間関係を読み解く上で欠かせません。「位階=身分ランク」、「官職=役職・ポジション」という前提知識を持っているだけで、読解のスピードと精度は格段にアップするはずです。
わかりづらい「二官八省制」を図解でスッキリ理解

平安時代の政治機構のベースとなっていたのが、「二官八省制(にかんはっしょうせい)」と呼ばれる仕組みです。これは飛鳥時代の終わりから奈良時代にかけて作られた「律令(りつりょう)」で定められたシステムが、平安時代にも引き継がれたものです。
「二官」とは、文字通り二つの巨大なトップ機関のことです。具体的には、神々を祀る祭祀を担当する「神祇官(じんぎかん)」と、一般の政治全般を取り仕切る「太政官(だいじょうかん)」の二つを指します。古代日本においては「祭政一致(神を祀ることと政治を行うことは一体である)」という考え方が強かったため、神祇官も太政官と並んで非常に重要視されていました。
そして、「太政官」の下には実際の行政事務を分担して行うための8つの省(八省)が置かれました。これが「中務省(なかつかさしょう)」「式部省(しきぶしょう)」「治部省(じぶしょう)」「民部省(みんぶしょう)」「兵部省(ひょうぶしょう)」「刑部省(ぎょうぶしょう)」「大蔵省(おおくらしょう)」「宮内省(くないしょう)」です。
実は、現代の「財務省」や「外務省」のように、仕事内容ごとにピラミッド型の組織を作る仕組みは、この平安時代の「二官八省制」とほとんど同じ構造なんです。「太政官(内閣)」の下に「八省(各省庁)」がぶら下がる形をイメージすると、スッと頭に入ってきますよ。
古文によく出る主要な「省」とその役割

二官八省の中で、高校生が古文を読む際に特によく目にする「省」がいくつかあります。これらを整理して覚えておくと、物語の背景がはるかに読みやすくなります。すべてを丸暗記する必要はありませんが、物語に関連しやすい以下の3つはしっかり押さえておきましょう。
まず1つ目は「中務省(なかつかさしょう)」です。これは八省の中でも筆頭格とされる最も重要な役所で、天皇のそばに仕えて詔勅(天皇の命令書)を作成したり、宮中のさまざまな取り次ぎを行ったりしました。「中務」という文字が入る役職に就いている人物は、天皇の側近であり、かなりのエリートだと判断できます。
次に「式部省(しきぶしょう)」です。紫式部や和泉式部といった女房のペンネームにも使われていることで有名ですね。式部省の主な役割は、文官(学問や知識に基づく役人)の人事考課や、学校・儀式に関する仕事を取り仕切ることでした。インテリ系の役人が集まる省とイメージしてください。
最後が「民部省(みんぶしょう)」と「兵部省(ひょうぶしょう)」です。民部省は現代の総務省や財務省のような役割を持ち、戸籍の管理や税の徴収など、国民生活と直結する実務を行いました。一方の兵部省は現代の防衛省にあたり、武官の人事や軍事、兵器の管理を担当しました。このように省の名前を見るだけで、その人物の専門分野や性格の傾向まで読み解くヒントになるのです。
「四等官制」の仕組みと覚え方のコツを徹底解説

さて、各役所(省など)の組織内部はどうなっていたのでしょうか。ここで登場するのが「四等官制(しとうかんせい)」です。これは、それぞれの役所のトップから下っ端までを4つの「幹部クラス階級」に分けるルールのことです。
具体的には、トップから順に「長官(カミ)」「次官(スケ)」「判官(ジョウ)」「主典(サカン)」と呼ばれます。これは日本の歴史を学ぶ上での基礎中の基礎です。
- 長官(カミ):その役所の責任者・トップ(例:大輔、卿)
- 次官(スケ):長官を補佐するナンバー2陣(例:少輔、助)
- 判官(ジョウ):実際の事務の責任者(例:大丞、少丞)
- 主典(サカン):文書の作成などを行う書記官(例:大録、少録)
漢字は役所によって変わりますが、読み方は基本的に「カミ・スケ・ジョウ・サカン」のままです。例えば、太政官の場合は「大臣(カミ)」「納言(スケ)」のように呼ばれますが、国司(地方官)の場合は「守(カミ)」「介(スケ)」「大掾(ジョウ)」「目(サカン)」という漢字が当てられます。

「覚え方のコツは、現代語の『かみ(上)にすけ(助)だち、じょう(定)務をさかん(盛ん)に行う』と語呂合わせすること!ちなみに、紫式部の『式部』は実はお父さんが式部省の『大丞(ジョウ)』だったことに由来するとも言われているんだよ」
藤原道長の経歴で見る平安時代の官位のリアル

仕組みだけだと少し退屈かもしれないので、平安時代を体現する超大物、藤原道長(ふじわらのみちなが)のキャリアを例に挙げてみましょう。彼がどのようにして「位階」を上げ、「官職」を上り詰めていったかを見ると、権力闘争のリアルが浮かび上がってきます。
道長は、関白・藤原兼家(かねいえ)の五男として生まれました。上流貴族の子息に対する特例(蔭位の制)により、道長は15歳の時にいきなり「従五位下(じゅごいのげ)」という中堅の位階からキャリアをスタートさせます。そして、侍従(じじゅう)や右兵衛権佐(うひょうえのごんのすけ)といった官職を歴任し、天皇のそばで経験を積んでいきます。
その後、兄たちの病死という強運もあり、道長の出世は加速します。30代前半で左大臣(太政官の事実上のトップ)という要職に就き、位階は正二位にまで駆け上がります。最後には、天皇の祖父という絶対的な立場を利用して「太政大臣(だじょうだいじん)」となり、「従一位」という天皇に次ぐ最高位を手に入れました。
古文の中で道長が登場する際、呼ばれ方が「殿」や「左大臣」や「太政大臣」と変化していくのは、この圧倒的な位階と官職の上昇が背景にあるのです。歴史上の人物の出世ルートを意識しながら古典を読むと、政治のパワーゲームとしての面白さが見えてきますよね。
平安時代の官職・位階を押さえて大学受験の古文を攻略しよう
位階によって変わる!貴族の特権と生活格差

位階(身分ランク)は単なる名誉ではなく、給与や特権、そして着る服の色まで決まる超シビアな基準でした。古文では、登場人物の服の色が描写されるだけで、その人の身分を示す重要なヒントになることがよくあります。
| 位階のグループ | 通称 | 服の色・主な待遇 |
|---|---|---|
| 一位〜三位 | 公卿(くぎょう / 上達部) | 紫色など。政治決定権を持つ雲の上の存在。 |
| 四位〜五位(参議除く) | 殿上人(てんじょうびと) | ひ色(赤系統)など。天皇の日常空間(清涼殿)への立ち入りが許されるエリート。 |
| 六位以下 | 地下(じげ) | 緑、青など。天皇の空間に上がれない一般下級役人。 |
特に重要な境界線が「五位」と「六位」の間です。五位以上になれば「殿上人」として天皇の近くに出入りでき、給与としての土地(位田)や布・米などが支給される特権階級の仲間入りを果たせます。一方、六位以下は現場で働く実務担当者であり、待遇には天と地ほどの格差がありました。
源氏物語などで、身分の低い男性が恋に悩んだり、出世できずに嘆いたりする描写がありますが、背景にはこうした絶対に越えられない位階の壁(経済格差)が存在していたのです。
除目(じもく)とは?官職が決まるスリリングな行事

古文を読解する上で絶対に知っておきたい超重要イベントが「除目(じもく)」です。これは平安時代において、年に数回行われる大規模な人事異動の儀式のことです。現代で言えば、各省庁の官僚たちや企業の会社員にとって運命の「人事発表の日」にあたります。
当時は、春に行われる地方官(国司など)の任命を「県召(あがためし)の除目」、秋に行われる中央役人の任命を「司召(つかさめし)の除目」と呼びました。役人たちはこの時期になると、少しでも良いポスト(官職)に就くために、有力な公卿(上位の貴族)に対して必死に根回しや賄賂、自己アピールを行いました。

「清少納言の枕草子でも、除目の日にソワソワして結果を待つお父さんの姿が描かれていますよね。結果を見てガッカリしているのを読んで、昔の人もサラリーマンみたいで大変だなと思いました!」
除目の結果によって一家の生活水準が激変するため、古文の物語では、任命の使者がやってくるかどうかを徹夜で待つ様子や、望んだ官職が得られず絶望して出家してしまう様子などが非常に生々しく描かれます。除目というワードが出たら、「人生を左右する大イベントのシーンだ」と瞬時に察知できるようになりましょう。
「受領(ずりょう)」って何?地方官のリアルな実態

地方の行政を担う国司(こくし)の中でも、特別な権力と財力を持っていたのが「受領(ずりょう)」と呼ばれる人々です。これも大学入試の古文で頻出のキーワードです。
「四等官制」でふれたように、地方国司のトップは「カミ(守)」、次官は「スケ(介)」と呼ばれます。本来、国司は複数名で赴任しますが、時代が下ると「書類上だけで都に残る(遙任)」貴族が増え、実際に現地に赴いて政治を行うトップの責任者を「受領」と呼ぶようになりました。
受領は現地での徴税権を強く握っており、規定の税さえ都に納めれば、取り立てて余った分は自分のポケットに入れることができました。そのため、「受領は倒れるところを掴め(転んでもただでは起きない、泥でも掴んでこい)」と言われるほど、強欲で裕福な者が多かったのです。
紫式部の父・藤原為時や、清少納言の父・清原元輔も受領クラスの貴族でした。中央(都)の権力闘争からは外れた中流貴族ですが、莫大な富を蓄えて中央の有力者(道長など)にすり寄るため、彼ら「受領階級」の動向は平安文学に多大な影響を与えています。
女房の役職(女官)もチェックして源氏物語を深く読む

ここまでは主に男性官僚の仕組みを見てきましたが、源氏物語などを読む上では女性の役職(女官・女房)の知識も不可欠です。平安時代の宮中には「後宮(こうきゅう)」という天皇の后たちが住むエリアがあり、そこで働く女性たちにも明確なランキングが存在しました。
天皇の后たち自身も、皇后・中宮(正妻)、女御(にょうご・有力貴族の娘)、更衣(こうい・出自がやや低い)とランク分けされていました。光源氏の母である桐壺更衣は、この一番身分の低い「更衣」であったため、他の女御たちから激しいいじめを受けたのです。
さらに、后たちに仕える「女房」たちにも、尚侍(ないしのかみ)、典侍(ないしのすけ)、掌侍(ないしのじょう)などのヒエラルキーがありました。これらも実は「四等官制」に近い仕組みですね。「内侍(ないし)」と呼ばれる女官たちは、天皇に対する取り次ぎなど重要な役割を担っており、高い教養と政治的手腕が求められました。「女房=単なるお手伝いさん」ではないことを理解しておくと、物語の解像度がグッと上がります。
検非違使や蔵人など平安時代の特殊な役職

「二官八省」という本来の律令制度の枠に収まらない、平安時代特有の特別な役職(=令外官/りょうげのかん)も古文にはよく登場します。この中で特に押さえておきたいのが「検非違使(けびいし)」と「蔵人(くろうど)」です。
「検非違使」は、現代で言うところの警察と裁判所を合わせたような強力な権限を持つ治安維持機関でした。京の都で犯罪を取り締まり、刑罰を決める役割を担っていたため、物語の中で事件がおきると必ず登場する組織です。彼らが現れると事は重大になっている証拠です。
一方の「蔵人」は、天皇のプライベートな秘書官です。「蔵人所(くろうどどころ)」という組織に属し、天皇の私室である清涼殿に立ち入ることが許されていた超エリート集団です。天皇から直接機密の指示を受けるため、律令上の正式な官職よりも実質的な権力を持つことが多く、多くの若手貴族が憧れる花形ポストでした。
このように、時代の変化とともに新しい役職が生まれ、古文の物語に彩りを添えているのです。
平安時代の官職・位階まとめ:古文読解の強力な武器にする

いかがでしたか?平安時代の「官職・位階」は、古文をただの文字列としてではなく、感情を持った人間ドラマとして読み解くための最高のツールです。二官八省制のピラミッド構造や四等官制の仕組みを頭の片隅に置いておくだけで、「左大臣の強大な権力」や「除目で受領になれなかった中流貴族の悲哀」が手に取るようにわかるようになります。

「これまでは官職名が出てくると読み飛ばしていましたが、これからは『あっ、この人は天皇の秘書だから偉いんだな』『あ、この人は服の色が赤だから高い身分なんだ!』って背景まで想像できそうです!」

「その通り!古文の勉強は単語や文法の丸暗記だけでは行き詰ってしまいます。当時の社会のルールや常識を知ることで、共通テストや二次試験の長文問題の読解スピードが劇的に上がりますよ。ぜひ今回の知識を武器にして、古文を得点源にしてくださいね!」








