テスト前に必見!漢文の再読文字10選を一覧と例文でマスター

漢文の授業で登場する「再読文字」、あなたも「なんだか難しそう…」「どうして二回も読むの?」と戸惑った経験はありませんか。返り点を一度無視して、また戻って読むという特殊なルールに、苦手意識を持っている人も少なくないでしょう。
しかし、漢文の再読文字は、その仕組みといくつかの重要な漢字さえ理解してしまえば、決して難しいものではありません。むしろ、一度ルールを掴めば、確実に得点源にできるおいしい分野なのです。
この記事では、「漢文の再読文字がわからない」というあなたの悩みを解決するため、基本の基本から、テストで役立つ応用知識まで、順を追って丁寧に解説していきます。
漢文の再読文字とは?基本の読み方とルール

漢文の学習で多くの人がつまずきやすい「再読文字」。
しかし、その正体は、一度仕組みを理解してしまえば決して怖いものではありません。
この章では、再読文字の基本的な考え方から、主要な文字の一覧、そして特に重要な文字の訳し方まで、基礎をじっくり固めていきましょう。
そもそも再読文字って何?一度目は無視する理由

再読文字とは、その名の通り「再び読む文字」のことで、一度目は副詞として読み、二度目は本来の動詞や助動詞として読む特殊な漢字を指します。
漢文を読む際には、まず返り点を無視してこの再読文字を一度読み、文末まで進んだ後、返り点に従って戻ってきてから二度目の読み方をするのがルールです。
なぜこのような面倒な読み方をするのでしょうか。
それは、一つの漢字が「〜しそうだ(副詞)」と「〜する(動詞)」のように、二つの異なる働きを同時に持っているためです。
一度目の読みで文全体の意味合いを先に示し、二度目の読みで文を結ぶ役割を果たしています。

先生、やっぱりなんで二回も読むのかピンとこないです…。

良い質問だね。例えば『将』は一度目に『まさに』と読んで、文全体が未来のことだと示すんだ。そして二度目に『〜す』と読んで文を完成させる。一度目で意味を予告する働きがある、と考えると分かりやすいかもしれないね。
このように、二度読むのにはしっかりとした理由があります。まずは「一度目は副詞、二度目は動詞・助動詞」という基本をしっかり押さえましょう。
漢文の構造から理解する再読文字の仕組み

再読文字のルールをより深く理解するために、漢文の基本的な構造と訓読(書き下し文にすること)のプロセスをおさらいしておきましょう。
漢文は基本的に「主語→動詞→目的語」の語順で書かれていますが、日本語は「主語→目的語→動詞」の語順です。この違いを吸収するために、私たちは「返り点」を使って読む順番を調整します。
再読文字は、この返り点のルールよりも優先される特殊な存在です。 具体的な読み方のステップは以下の通りです。
- まず、再読文字を一度目(副詞)の読み方で読む。このとき、その再読文字についている返り点は無視します。
- そのまま文を読み進め、他の返り点があればそれに従って読む。
- 一度読んだ場所まで戻ってきたら、今度は先ほど無視した再読文字を二度目(動詞・助動詞)の読み方で読む。
この「一度スルーして、戻ってきてから読む」という感覚に慣れることが、再読文字攻略の第一歩です。
まずはこれだけ!高校で習う主要な再読文字一覧

再読文字はいくつもありますが、高校の漢文で必ず押さえておきたいのは、以下の10個です。まずはこの一覧を見て、どんな文字があるのか全体像を掴みましょう。

たく先生、10個もあるのですね…。覚えるのが大変そうです。

大丈夫ですよ、みちかさん。これから意味のグループや熟語と関連付けて覚えるコツも紹介しますからね。まずはこの表で、一度目の読みと二度目の読み、そして意味の三点セットを確認することが大切ですよ。
再読文字 | 一度目の読み | 二度目の読み | 意味(訳し方) |
---|---|---|---|
未 | いまダ | 〜ず | まだ〜ない(〜しない) |
将 | まさニ | 〜ントす | これから〜しようとする、〜するつもりだ |
且 | まさニ | 〜ントす | 今にも〜しようとする、〜しそうだ |
当 | まさニ | 〜べシ | 当然〜すべきだ、きっと〜だろう |
応 | まさニ | 〜べシ | きっと〜だろう(〜にちがいない) |
宜 | よろシク | 〜べシ | 〜するのがよい |
須 | すべかラク | 〜べシ | 〜する必要がある |
猶 | なホ | 〜ごとシ | ちょうど〜のようだ、あたかも〜のようだ |
由 | なホ | 〜ごとシ | ちょうど〜のようだ(「猶」と同じ) |
盍 | なんゾ | 〜ざル | どうして〜しないのか(〜すればよい) |
※この表は漢文の再読文字学習の基本です。スクリーンショットを撮るか、印刷して手元に置いておくことをお勧めします。
※カタカナ表記のところは送り仮名です。
最重要「未」の用法と訳し方を例文で解説

数ある再読文字の中で、最も重要で登場頻度が高いのが「未」です。これは「まだ〜ない」という打ち消しの意味を表し、英語の “not yet” に近いニュアンスを持ちます。

注意点として、「未」はそれ自体が打ち消しの意味を含むため、書き下し文では打ち消しの助動詞「ず」を伴います。
また、「未」は「未だ〜ず」の形で使われるだけでなく、「未だ〜有らず(いまだ〜あらず)」のように、間に他の動詞が入ることも頻繁にあります。

それでは以下に具体的な動き方を示していきます。ボタンを押すと再生します。パソコンでの視聴を推奨します。
再読文字の動きアニメーション
「未 嘗 不 嘆 息」の読み方をステップごとに見てみよう
下の「開始」ボタンを押してください。
書き下し文:
現代語訳:
これは「未」と「不」が同時に使われる二重否定の形で、「〜しないことはない」、つまり「必ず〜する」という強い肯定を表す重要表現です。
未来を表す「将」と「且」のニュアンスの違い

どちらも「まさに〜んとす」と読み、「これから〜しようとする」という未来の意味を表す「将」と「且」。この二つはよく似ていますが、実はニュアンスに違いがあります。
将 | 且 | |
---|---|---|
読み | まさニ〜ントす | まさニ〜ントす |
意味 | これから〜しようとする | 今にも〜しようとする |
ニュアンス | 比較的、確実性の高い未来や意志を表す。 | すぐそこまで迫っている瞬間的な未来を表す。 |

これは「行こう」という意志や、比較的近い未来の予定を示します。

太陽が沈む寸前の、切迫した状況を表しているのが分かります。このニュアンスの違いを理解しておくと、文章をより深く読み解けます。
義務や当然を表す「宜・当・応・須」の使い分け

「〜べし」という二度目の読みを持つ再読文字は4つもあり、混同しやすいポイントです。
これらは「義務」や「当然」といった意味合いを持ちますが、その強さやニュアンスが少しずつ異なります。

うわー、全部『べし』がつくから、テストで出たら絶対間違えちゃいそうです…。

りょうたくん、意味の強さで順番に覚えるといいかもしれないわ。『須』が一番強くて、『当』『応』『宜』の順で少しずつ柔らかくなる、ってたく先生が言ってたわよ。

その通りです。それぞれの漢字が持つ元々の意味、例えば『宜』は『よろしい』、『須』は『必須』という熟語をイメージすると、覚えやすくなるはずですよ。
再読文字 | 読み | 意味・ニュアンス | 覚え方のヒント |
---|---|---|---|
宜 | よろシク〜べシ | 〜するのがよい。(道徳的に見て) | 「宜しい」→〜するのが望ましい |
当 | まさニ〜べシ | 当然〜すべきだ。(義務・当然) きっと〜だろう。(推量) | 「当然」→〜すべきだ |
応 | まさニ〜べシ | きっと〜だろう。(強い推量) 当然〜すべきだ。 | 「応答」→きっとそうだろう |
須 | すべかラク〜べシ | 〜する必要がある。(必須) | 「必須」→〜しなければならない |
このように、意味の強弱や、「義務・当然」なのか「推量」なのかという点で区別するのがポイントです。
漢文の再読文字を攻略!覚え方のコツと応用

再読文字の基本が分かったら、次はより実践的な内容に進みましょう。
ここでは、暗記を楽にするためのコツや、少し発展的な再読文字、そして他の句法との組み合わせといった応用問題に焦点を当てます。
最後には力試しができる練習問題も紹介しますので、ぜひ挑戦してみてください。
熟語をヒントに覚える!再読文字の効率的な暗記法

10個の再読文字を丸暗記するのは大変です。そこで効果的なのが、私たちが普段使っている日本語の熟語と関連付けて覚える方法です
- 「未」 → 「未来」「未定」… まだ来ていない、定まっていない
- 「将」 → 「将来」… これから来ること
- 「当」 → 「当然」「当番」… そうするのが当たり前
- 「須」 → 「必須」… 必ず要るもの
このように、漢字が持つ中心的な意味(コア・イメージ)を熟語から推測することで、機械的な暗記から脱却できます。
さらに、意味のグループで覚えるのも有効です。
- 未来グループ: 将、且
- 義務・当然グループ: 宜、当、応、須
- 比況(ひきょう)グループ: 猶、由
これらのグループ分けを意識するだけで、頭の中が整理され、記憶に定着しやすくなります。
比況の「猶・由」と疑問・反語の「盍」もマスター

主要な再読文字の中でも、少し特殊な働きをするのがこの3つです。
比況の「猶」「由」(なホ〜ごとシ) これらはどちらも「ちょうど〜のようだ」「あたかも〜と同じだ」という意味を表し、何かを何かにたとえる「比況」の句法で使われます。
英語でいう “like” や “as if” に似ています。「猶」と「由」はほとんど同じ意味で使われるため、セットで覚えてしまいましょう。

疑問・反語の「盍」(なんゾ〜ざル) これは「どうして〜しないのか」という疑問の形をとりながら、実際には「〜すればよいのに」という強い勧めや提案を表す「反語」の働きをします。

「〜しないのか?」と問いかけて、相手の行動を促すのが「盍」のポイントです。
否定形とセットで頻出する再読文字のパターン

再読文字は、単体で使われるだけでなく、「不」や「非」といった否定の字とセットで登場することもよくあります。特に注意したいのが、意味が大きく変わるパターンです。
前述の通り、「未」は「不」とセットになることで「未だ〜ずンバ有ラず(必ず〜する)」という二重否定になりました。
もう一つ重要なのが、「不宜(〜べからず)」 や 「不当(〜べからず)」 のように、「宜」や「当」の前に「不」が置かれるパターンです。 この場合、「〜するのが良くない」「〜すべきでない」という、「禁止」や「不適当」の意味になります。

再読文字の前に「不」があったら、「〜ない」ではなく「〜べきでない」と訳せないか、一度立ち止まって考える癖をつけましょう。
白文で挑戦!再読文字の書き下しと現代語訳

ここまでの知識を使って、実際の入試問題に近い形で白文の読解に挑戦してみましょう。まずは自力で書き下し文と現代語訳を考えてみてください。


えーっと、まず『宜』が再読文字だから、一度目は『よろしく』と読んで…。返り点を無視して最後まで読んでから戻ってくるのよね。

『其の言を納る』が先かな?いや、『宜』があるから…うーん、難しいなあ。
解答: 書き下し文: 王曰はく、「宜しく其の言を納るべし」と。 (おう いハく、「よろシク そノ げんヲ いルべし」と。)
現代語訳: 王が言うことには、「(王として)当然その言葉を受け入れるべきだ」と。
解説:
- まず主語の「王」と動詞の「曰」を読む。
- 会話文の中に入り、再読文字「宜」を一度目の「宜しく」と読む。
- 「宜」についているレ点を無視して、目的語の「其言」へ進む。
- 「其言」から「納」へ一二点に従って返って「其の言を納る」と読む。
- レ点に従って「宜」に戻り、二度目の「べし」と読む。
このように、ルール通りに一つずつ処理していけば、複雑に見える文も正しく読み解くことができます。
【力試し】無料でできる漢文の再読文字練習問題

知識をインプットした後は、問題を解いてアウトプットすることが記憶の定着に不可欠です。最近では、無料で利用できる優れた学習サイトやアプリがたくさんあります。
特におすすめなのが、映像授業で有名な「スタディサプリ」です。再読文字の解説動画を見た後、そのままオンラインで練習問題に挑戦できるため、効率的に学習を進められます。
- スタディサプリ: 映像授業+練習問題。漢文の基礎から応用まで網羅。
- 漢文修験道: 豊富な問題量で、ドリル形式で繰り返し学習できるサイト。
- Quizlet: 単語カード形式で、スマホアプリで手軽に暗記チェックができる。
これらのサイトを活用して、たくさんの問題に触れ、再読文字を得意分野に変えていきましょう。
漢文の再読文字、その本質と攻略法の総括

- 再読文字は一字に副詞と動詞・助動詞の二つの働きを持つ漢字
- 一度目の読みで文の意味を予告し、二度目の読みで文を完成させる
- 読む際は一度目の読みで付いている返り点を無視するのがルール
- 高校で覚えるべき主要な再読文字は10個存在する
- 最重要の「未」は「まだ〜ない」という打ち消しを表す
- 「将」と「且」は未来を表すが、「将」の方が確実性が高い
- 「宜・当・応・須」は義務や当然を表し、「須」が最も意味が強い
- 暗記は日本語の熟語と関連付けると効率的である
- 意味のグループ(未来、義務、比況など)で整理すると覚えやすい
- 「猶」と「由」は「〜のようだ」という比況を表す
- 「盍」は「どうして〜しないのか(〜すればよい)」という反語
- 「未」と「不」の組み合わせは「必ず〜する」という二重否定
- 「不」+「宜・当」は「〜べきでない」という禁止の意味になる
- 白文を読む際は、ルールに従って一つずつ処理することが重要
- 知識の定着にはオンラインの無料練習問題を解くのが効果的

